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★ 適性試験・小論文試験共通
【20091120 感覚の排除
 

1 「論理的に考える」とは

 巷には「論理的に考える方法」とか「論理的思考力を鍛える」といったタイトルの書籍があふれていますが,実は「『論理的に考える』とは何か?」ということは,あまりはっきりしていません。

 実際,「論理的」という言葉は,対象を分類・整理する,抽象化する,階層化する,相互の関係をつなげる,分類したものを総合する,思考を積み上げる……等,様々な場面で使われます。そして,どれも一概には否定できません。一般化した『論理的な思考』というもの自体を考えることに無理があるのでしょう(余談ですが,現実には,「論理的」と言う言葉によって相手を圧倒するという使われ方が多いように思えます。「論理的」と言われると「自分にはない・苦手」などと思ってしまう人が多いので,主張の中身がなくても通りやすくなるのです。もちろんこの使い方はここでの「論理的」とは無縁です)。

 しかし,様々な使われ方の中で共通する1つの側面があります。「論理的」という言葉は,「感じる」「思う」といった「感覚」の次元ではなく,「考える」という「思考」の次元で使われる,という点です。

 人間は優れた「感覚」を持っています。直接言葉を交わさなくても,わずかな目の動きだけで,相手が本当に考えていることを深く理解することができます。声や楽器の音の微妙な音波の振動の差異によって,言葉では表すことのできない,時代をも超えた共感が得られることを私たちは知っています。これらは,「感覚」の優れた働きです。

 しかし,残念ながら「感覚」は誤ることがあります。「思い込み」です。熱い湯に手を浸してから,常温の水に手を入れると,冷水だと勘違いしてしまいます。怖そうな顔をしている人を見ると,悪い人だと思ってしまったりします。人は見かけにはよらないとわかっているにもかかわらず,です。さらに,感覚がもたらすインパクトが強烈であるが故に,いったん誤った情報がもたらされると,それを修正することが難しくなります。ですから「人は第一印象が80%」といったことが言われるのです。

 そういった「感覚」による「思い込み」(これを「偏見」と言います)を排除することこそが,「論理的に考える」際の第一歩になるのです。

2 「すでにわかっていること」と,「まだわかっていないこと」とを分ける

 私たちの目指す本質を捉える姿勢は,前提としてこの「思い込みの排除」を必要とします。外部から情報を仕入れる際に,「感覚による思い込み」(=偏見)を常に警戒することが,第一に注意すべきことになります。これがいわゆる”Critical thinkig”(=懐疑的・批判的な態度をベースとする思考方法)です。常に「思った」こと・「感じた」ことを「疑い」,そこに「思い込み」があるのではないのか,を「考え」ていくのです。

 その具体的な例を見てみましょう。例えば,日常生活では「乗車券がないとご乗車できません(A)」と言われれば「では,乗車券があるから乗車できる(B)」と思います。しかし,これは「A:pならばq」から「B:(pでない)ならば(qでない)」を導く裏の誤りです。本当は「pならばq」という文Aは「pでない」ときについては何も言っていませんから,「pでない」ときの情報は引き出せません。このように,「わかっていること」と「わかっていないこと」とをはっきり区別する姿勢を学ぶことが第一歩だと言えます(もちろん,日常生活では(A)に「それ以外に乗車できない理由はありません」という暗黙の前提が付随しているとするので会話が成立しています。ですが,そこまで考えずに私たちは感覚的に生活しているということです)。

3 「漏れなく,ダブりなく」考える

 適性試験の学習をすすめていると「真偽表」を使う場面が出てきます。これは,「思い込み」を防ぐ上での重要な見方,「漏れなく,ダブりなく考える」を実現する手法を学んでいるのです。「起こりうる全てのパターンを先に網羅し,その後に具体的な事例を考察する」という「思い込み」を防ぐ発想が,真偽表の背景にある考え方です。

 真偽表の方法は日常生活での感覚からすると,非常に不自然で何をしているかわからない方法に見えます。しかし,「感覚」では,例えば「Aが真でBが真でCが真のときに2つの命題の真偽は同じになる」というように,パッと目に入ってくる事例にとらわれてしまいます。ところが,実際には「Aが真であってBが偽であるケースがある」とか「Aが偽の場合もある」など,見落としてしまっている例外が存在します。これらの他のケースが「思い込み」によって見えなくなってしまいやすいのです。

 そこで「思い込み」による漏れをなくすために,初めに考えうる全てのパターンを網羅し,次に個別の事例の考察に進んだ,というのが真偽表の方法のスタイルです。目の前にあるもの以外まで思考の範囲を広げる訳ですから,ストレスはかかります。また,抽象度も上がります。しかし,そのことにより,漏れのない思考をすることができるのです。「pが偽のとき『pならばq』は真」という点がおそらく最も理解しにくいところですが,これも「全てのパターンを網羅する」という必要性から定められたものだ,という理解が大切でしょう。

 以上のようにして,感覚による思い込みを排除する視点を,私たちは学んでいるのです。

 
 
 
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