| HOME > 法科大学院 > 米谷先生&石田先生による適性試験講評 > 日弁連法務研究財団版 |
| |
 |
|
| |
10年度日弁連法務研究財団版の適性試験が行われました。来年度からは大学入試センター版と日弁連法務研究財団版の適性試験が統一されることになっていますから,現行の日弁連法務研究財団版適性試験としては最後の実施となりました(来年度以降がどうなるかは現段階ではまだ不明ではありますが)。
形式的には,第1部,第2部でそれぞれマーク数が1つ増えました。しかし,難度は昨年とほぼ同等であったと思われます。第1部は曖昧な論理がやはりありましたが,文章量が全体として少なかったので1問増えたことの影響はそれほどでもなかったでしょう。第2部は昨年度からの易化の傾向を引き継ぎました。小問が1問増加したとはいえ,1問当たりの作業量は一昨年以前から見れば少なくなっているので,むしろ易化したのではないかとも考えられます。第3部の後半の2問がやや読みにくかったのですが,設問自体は例年並みでした。
全体としての平均は昨年並みか,やや上がるのではないかと現時点では考えています。ただ,今年の問題も「事前に対策を十分にしていた場合には取り組みやすかった」ということであり,受験生が十分に準備できていなかった場合には平均点が下がる可能性も残っています。
|
| |
 |
昨年度は2人の会話を分析するタイプの問題が多く出されていたのですが,ことしは1問もありませんでした。また,一定の文章を読んだ上での帰結や要旨を問うような問題も余りありませんでした(該当するのは第16問ぐらい)。結果として全体としての文章量は減っているので,問題数が1問増えた(昨年度まで23題が本年度は24問)ことによる負担増はそれほどでもなかったように思われます。ただ時間の使い方という点では,ルールの当てはめに関係するタイプの問題(問題5,12,13,17,23)が多かった点が問題となったでしょう。このタイプの問題に時間をかけすぎてしまうと,時間が足りないという事態に陥ってしまったと思われます。このようなタイプの問題へ対処をきちんとできたかどうかが,第1部全体の点数に大きな影響を与えたと考えられます。なお,問題5の「仕様の重要度」がそれぞれの持つ仕様の重要度の和で考えられるといった問題設定は,辰巳の全国模試で出題したものと同様のものでした。
内容的な特徴としては,昨年度影を潜めていた反論に関する問題が多く出されたり(問題2,6,16,19),論法の型に関する問題(問題1,7,9,21)などが多く出されており,以前の出題傾向に戻ったようなところがありました。実際,以前に出されている論理構造がほぼそのまま出題されたような問題もありました(問題7,21など)。形式論理に関する問題(問題3,8,11,24)も一定量出題されましたが,それほどのひねりはなく基本的な逆・裏・対偶,ド・モルガンの法則などがテーマとなっていました。文章量が総じて少なかったことも合わせて考えると,作問にそれほど労力をかけていないのかもしれません(作りにくい統計や資料に関する問題も今年は見られませんでした)。しかし,受験生にとっては十分な対策をした人ほど「秒殺」できる問題が多く,解きやすかったと言えます。講義でお話ししたような基本事項をしっかり理解し,辰巳のオープン(連続模試)や全国模試等を通じて,時間管理やペース配分の仕方なども含めて十分に研究・対策をしていれば,十分に対処できたセットであったと考えられます。
以前より指摘しつづけていることですが,今年度も出題者の想定している論理構造にむりやりこちらの頭をねじ込まないと正解が選べない問題が依然として多く見られました(問題1,6,9など)。今回は言葉の使い方として疑問のある問題もあり(問題17など),出題意図の推定を要領よく行なえるか否かで点数が大きく上下してしまうという側面が強い試験になっています。来年度からの新体制の下での適性試験では,このような点について十分な検討が必要ではないかと考えます。
|
| |
 |
大問4つは従来通りでしたが,小問が7つの問題があったため,昨年よりも小問で1つ増加しました。しかし,一昨年以前の問題に比べれば1問ごとの作業量は少なく,完答が可能になるように配慮されているセットだったと言えます。
とはいえ,問題の条件と問いの内容を正確に捉えるところで躓いた場合には,問題に入っていけず,時間を浪費するということは十分に起こり得ました。また,設問中の「しかけ」に気がつかないと手も足も出なくなってしまうという面もやはりあったでしょう。このような傾向については,辰巳の講義で繰り返し強調してきた通りのものです。事前に対策をしっかり行ない,問題に対する「構え」を身に付けていることが必要でした。
問題1の小問(1)でいきなり出ばなをくじかれた受験生は多かったことでしょう。(1)は,1から4の数字が1つずつ書かれた赤のタイルと青のタイルの組が4枚ずつ,合計8枚あるとき,そこから4枚のタイルを選ぶという設定でした。1から4の数字のうち1組が選ばれないとき(問題では4が選ばれないとなっていた),残り6枚から4枚を選ぶと,必ず赤・青の両方のタイルを選ぶことになるという論理が問われていました。これは講座でお話しした「鳩の巣論理」の応用でした。赤・青とも3枚ずつしかないので,4枚選ぶと両方の色が必ず入るということです。このような論理に触れたことがないと,この問題で「フリーズ」してしまうこともあったでしょう。もちろん,そのような場合はすぐに本問をスキップして,設定の異なる次の小問に取り組めばよかったのですが。
このように問題1が数的な論理を問う問題でした。講座でお話ししたようなパターンを身に付けていれば対処できるのですが,対策をしていないと考えにくかったかもしれません。本問を要領よく処理する(場合によっては全問スキップということも含めて)ことが,今回のセットに取り組む上ではポイントになっていたように思われます。
問題2は典型的なタイムスケジュールの問題ですが,各人が「他の全員と1回ずつ一緒になるように仕事をした」という条件の利用が大きな鍵になっていました。この条件によってA,B,Cの出勤日およびAの出勤日の相手がすべて確定することに気付くのが,大きなポイントでした。それさえ理解すれば,残った「月・火」「木・金」での組合せのパターン(残るD・E・F・Gの4人の組合せ)は限られるので,一気に最後まで答えることができます(最後の(6)はやや手間取ります)。
問題3はいわゆる「うそつき問題」で,嘘をついた人を仮定して,確実に言えることを整理しておけば,やはり一気に答えられる問題です。ただ(1)の設問の仕方から,「私とAとBとは犯人ではありません」というDの証言が「ウソ」だということの解釈において,出題者がド・モルガンの法則を念頭においていることを読み取る必要がありました。すなわちDの証言が「ウソ」とは「私が犯人か,Aが犯人か,Bが犯人か,のいずれかは正しい」という意味だ解釈して答えることになります。この点さえクリアすれば,小問は7つと多いのですが,オープンなど練習した「うそつき問題」に対する対処法を用いて一気に正解を選ぶことができました。
問題4はAからIまでの9名の意見の関係をネットワーク型の図に表して対処することになったでしょう。このとき,Fが離れた2カ所に現れることに気づくのがポイントでした。やはり問題の条件の正確な把握が重要だと言うことです。また,すべての場合を網羅しつくすよりも,それぞれの小問での問いの向きを意識しながら最小限の労力で対処することを意識するとより効率的だったでしょう。これもJLF第2部での対処の仕方として,講座で繰り返しお話ししたことです。
以上のように,JLF第2部の問題でよく現れる論理やパターンについて事前に研究しておけば,十分時間内に対処できる問題でした。ただ,正確な条件の読み取り,問いの方向性の把握(「正しい」ものを選ぶのか,「誤っている」ものを選ぶのか,など)で失敗してしまうと,大きく時間をロスしてしまったと思われます。
しかし,そのような場合でも,残り時間,全体の状況を見渡し,失点を最小限にする判断ができれば,それなりに点数をまとめることができたはずです。このような現場での対処の仕方は,続くDNCの試験でも重要なポイントとなりますので,うまくいかなかった人はどこで失敗したかを振り返り,自己をコントロールするための方法を考えておきましょう。
|
| |
 |
昨年は4問も出題された個数問題は1問と少なくなりましたが,従来通り曖昧な設問が多く見られました。しかし,問題1・2はそれほど読みにくい文章でなかったこと,文章全体を読まなくても答えられる問題が多かったことから,ほぼ昨年度並みの出題であったと思われます。しかし,問題3・4の文章が読みにくいものだったので,文章を読むスピードが不足していた人は,後半での得点が難しかったかもしれません。
問題1は文章をしっかり読もうとすると時間がかかるかもしれませんが,問いに答えることを優先させて対応する部分をざっと読めば,正解の選択肢が大体選べました。JLF第3部独特の対処の仕方を身に付けていれば10分以内で十分に処理できたでしょう。もちろん細かな引っかけがあったのですが,本問は最小限の力で処理することを優先した方がよかったでしょう。
問題2は文章自体は読みやすいのですが,はじめの3問が論理操作を求めており,難しいと感じた人もいたかもしれません。特に(3)は統計でよく扱われる論理で,馴染みがないと対処しにくかったかもしれません。また,並び替えの問題が(5)で出題されていますが,講座でもお話ししたようにJLFの場合は単純に流れを考えるだけで十分であり,容易な問題でした。
問題3は,主として,読みにくい文章から事実を抜き出す能力を測る問題でした。とはいえ,消去法で答えるしかない設問があり((4)など),むしろ要領の有無が処理時間には影響したと思われます。要領よく切り抜ければ一定の読解が必要な第4問に時間をかけられたので,全体の点数は大きくアップしたと考えられます。なお,(3)はDNCでよく見られる,文章の構成意図を問う問題でした。
問題4は抽象的な内容を扱った文章だったので,4問の中で最も読みにくかったでしょう。先に述べたように,この問題にどれだけ時間を確保できたかが全体の点数を左右したと思われます。ですが,時間の確保はむしろ精神的なゆとりに関係しています。実は残り時間が少なくても設問に答えることだけに集中すれば,全部を読まなくてもほぼ正解できる設問でした。したがって,ぎりぎりの状況でも頭をフルに回転させることができた人は,以外と得点できたのではないでしょうか。
ただし,(2)は別です。この問題は適切でない小見出しの「数」を問う問題でした。つまり出題者が著者に成り代わって原典にない小見出しを付け加え,その中で「適切でないもの」を問うたことになります。実際に執筆した著者からすれば,自分がつけた小見出し以外の4つは「適切でない」となるのではないでしょうか(原典ではアが小見出しとなっています)。明らかに内容とそぐわないものがある,というのが出題者の趣旨だと考えられますが,出題者が「適切」と考えていると思われる選択肢も微妙です。真面目に考え込んで時間を使ってもあまり意味がなかったと思われます。曖昧な設問だと判断した時点で,要領よく割り切って処理すべきだったでしょう。
以上のように,本年度の問題も「読解力」というよりも,「要領」が点数に直結する試験だったと思われます。来年度以降の出題においては,このような出題の質についてより検討がなされるべきだと考えます。
|
| |
 |
週末には大学入試センター版の適性試験が行われます。特に,法務研究財団版で失敗したと思っている受験生の方は気持ちを切り替えて,体制を立て直すことが大切です。上に見てきたように失敗した(と思っている)方は,簡単に言えば「要領」が悪かったのです。それだけのことと考えましょう。
もちろん,条件の正確な把握,問いの方向の確認といった基本的な動作で失敗したという場合は深く反省せねばなりません。そのような基本動作はDNC版の適性試験でも問われます。また,ある問題にこだわってしまって他の問題が解けなかったという人も,同様のことがDNC版でも起こり得ます。以上のような失敗があったとしたら,それらは次の試験に活かせる経験です。どうすれば対処できたか,次の試験ではどのようにすればよいのか,自分なりの対処法を考え,行動指針を整理しておきましょう。
そして,大学入試センター版ではより緻密な思考が必要になります。特にJLF版で「うまくいった」人は思考の仕方を修正しておきましょう。JLF版では「こんな感じ」というレベルで判断してけっこううまくいくことがあるのですが,DNC版ではそうはいきません。油断をせず,週末の試験に備えて頭の使い方を切り替えるようにしましょう。
そして,健康管理が大切です。気候が変わりやすくなっています。体調には注意をして下さい。
皆さんの健闘を祈っています。
|
| |
| |
|
| |
|
| |