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■公開:2011年6月07日
■更新:2011年7月13日
 
第1回試験について
第2回試験について

第1回試験について
辰已専任講師 石田浩一
 

 適性試験管理委員会による第1回の法科大学院全国統一適性試験が実施されました。昨年度までの大学入試センターと日弁連法務研究財団の2団体による実施という体制から,統一された1団体による実施ということで,どのような変化が生じるか注目された試験でした。
  結果としては,私たちが予想してきた通り,昨年度までの日弁連法務研究財団版の適性試験の内容がそのまま引き継がれたものとなりました。
  形式面での変更はほとんどありません。昨年度第2部で小問の数が25であったものが,24となっただけです(この結果,第1部から第3部まで小問数は24で統一されました)。
  内容的にも,ほとんど前年度までの日弁連法務研究財団版の傾向を引き継ぎました。第1部で若干大学入試センター版を意識したかのように見える出題がありましたが,従来の日弁連版での傾向の中でも十分説明し得るものです。
  続いて実施される第2回の傾向が気になるところですが,「同質の試験」(法科大学院全国統一適性試験HPのQ&Aより)とうたわれているので,今回の傾向がそのまま引き継がれると考えるのが妥当でしょう。
  難度についてはこの後各部ごとの検討を示しますが,全体としては昨年度よりも難化したと考えられます。第1部は各問の文章量が増えたこと,演繹的推論にかかわる問題の作業量が多く時間が取られたこと,帰納的推論の中でも論理構造の的確な把握が必要な問題が多く,受験生としては取り組みにくかったこと等が,平均点を下げる要因になったと考えられます。第2部は素直な問いが多く,本来易化したはずですが,数字の扱いに慣れていないと時間がかかり,難しく感じられた可能性があります。満点を取る人はそれなりに出るはずですが,全体としての平均点はむしろ下がる可能性があります。第3部は全体として昨年より文章量が増えています。また第1問で暗号というあまり馴染みのない内容が扱われたため,出だしでペースを崩された人が多かったでしょう。他の文章はそれほど読みにくくなかったはずですが,設問の曖昧さもあり,時間内ですべての問いに答え切ることは難しかったと思われます。したがって,第3部もやはり平均点が下がる可能性があると思われます。

 全体としては,昨年来の傾向を引き継いでいますが,昨年に比べると論理構造をきちんと把握しないと答えにくい問題や,細かな条件を見落としてしまうと解けなくなってしまう問題が多くなっています。これらの傾向は昨年までの大学入試センター版の適性試験の傾向を意識したものなのかもしれません。第2回の試験を見据えるならば,時間制限は従来通り厳しいので,「速く,しかし,緻密に」という二律背反の要求がより厳しくなされていると構えておいたほうがよいことになります。
  近年の日弁連版の適性試験の流れとして,演繹的推論にかかわる問題の比重が増加していたことがあげられます。今回の試験もこの流れを引き継いでおり,この点に対する対処を上手にできたかどうかが,第1部の点数に大きく影響を与えたと考えられます。問題3,11,12,23などが該当する問題です。
  問題3では「D」の発言の中の「Bさんと夫婦で」というところを読み落とさないようにする,というのがポイントでした。このような細かな「仕掛け」に引っ掛からないようにすることが今回のセットでは他にもいくつか見られました。
  適切な情報の整理の仕方が身に付いているかどうかがポイントとなったのが問題11,12でしょう。問題11は金銭に関する噂については話しかけられた側から話しかけた側に情報が伝わる,という「ルール」を正確に把握した上で,3人の間の関係を図式化して考えることが必要でした。問題12では,4つの志望分野と3つの進学希望とを組み合わせた4×3の表を書いて整理することになったでしょう。ただ,2組についての条件「自然科学系への進学志望の学生,または,社会科学系志望で海外留学希望の学生」の中の「または」を,「(自然科学系への進学志望の学生,または,社会科学系志望)で海外留学希望の学生」のように読み間違った受験生が多かったように思われます。問題23は文章が長く,また最後の方にあったということでほとんど検討できなかった人が多かったでしょう。
  これらの問題を適切に短時間で対処できれば他の問題に対する精神的余裕が生まれ,高得点が望めました。逆にこれらで時間を取られてしまうと,他の問題に割く時間が無くなり点が伸びなくなります。どうしても苦手だという人は,このタイプをはじめから後回しにしてしまうという考え方もありでしょう。
  帰納的推論に関する問題では,背後にある論理構造をきちんと取り出す必要のある問題が多かった点が特徴です。特に,事実から,その事実をより上手に説明する仮説を導く,仮説形成と呼ばれる推論が背景にある問題が目立ちました。たとえば,問題4ではAの発言内容の背景にあるものを合理的に説明する内容(=仮説)をBが提供するという構図が問われていました。問題17もほぼ同じことを聞いています。問題8,16,20なども背景には仮説形成の考え方があります。辰已での講義でお話ししたように,この仮説形成という考え方はきちんと見方を身につけないと,なかなか使いこなすことができません。講義や演習を通じてしっかり理解しておくことが必要でした。
  主張を支える根拠に関する問題も多く出題されていました(問題9,14,18)。このタイプの問題も,論証構造という見方をしっかり身につけていないと混乱しやすいでしょう。形式面で見ても,同じ論理構造をしているか否かを問う問題が昨年度よりも増えています。このように,昨年度までと比べて, 論理構造を取り出すことがより強く求められていたと考えられます。
  以上のような傾向が第2回において続くとするならば,その対策としては,演繹的推論,帰納的推論ともにその思考スタイルをより深く理解することがポイントになるでしょう。第1回の問題をよく復習し,問われている論理構造を研究しましょう。そして身に付いていなかった部分を洗い出し,曖昧な部分をしっかり考え詰めてクリアにして行きましょう。さらに現場で使いこなせるよう,今までの教材を利用して演習を行い,復習をするとよいでしょう。

   

昨年の問題は,一昨年以前の問題に比べて作業量が少なくなり,十分に時間内に完答できるものとなりました。本年の第1回の問題は,この前年の傾向を受け継いでいます。いくつかやや難しい問題がありますが,第2部対策を十分にしていれば,時間内で満点が取れるセットだったと言えます。
  しかしながら,問題1,4と数的処理に関する問題が二つあったことが,全体の平均点を引き下げていると思われます。逆に言えば,辰已の講義でも繰り返し指導してきたように,数的処理でよく出てくるパターンを研究し,習熟することが高得点の鍵になっていたと言えます。
  問題1は数に関する問題とはいえ,もれなく数え上げていくだけの問題です。ただし,(4)を後回しにするのがポイントでした。過去の問題でも問題1の中でわざと難しい問題が挿入されていて,その問題にこだわると全体でダメージを受けるというパターンがありました。(4)は数え上げていけばできますが,高得点のためには「後回し」という選択を決断できるとよかったでしょう。講義で繰り返しお話ししてきたように,全体での得点率を上げるという一段上からの視点での自己コントロールが求められているのです。
  問題2はタイムスケジュールの典型問題で,練習をしていればスムーズに完答できたでしょう。本問で時間を稼ぐことが,高得点のためには欠かせませんでした。
  問題3は,順位の相対関係が問われているので,ブロックパズルの発想が有効でした(この視点も講義でお話ししています)。Cを含めた3人の組,Eともう1人での2人の組,そしてDだけの組の3つに分ければ,これらの組(ブロック)の入れ替えしかないことがわかり,(1)(2)を短時間で処理できます。もちろん,条件の緩い(1)(2)で考え切れなかった場合でも,条件が加わる(3)以降の方が考えやすいことを見抜いて先に進むという判断ができれば,失点を最小限に抑えることができたでしょう。これも,一段上から自己をコントロールする視点です。
  問題4では連立方程式が出てきました。ただ,(3)以外は最小や最大に関する問いです。したがって,最小になるまたは最大になるという方向性を意識し,極端なケースから順に考えていくのがよかったでしょう。順番に考えていくと規則性が見えますので,一気に小問を片付けることができます。
  第2回では,数的処理の比重が今回程高いかどうかはわかりません。しかし,一定量出されることは覚悟し,対策をしておくべきでしょう。ただ,一番重要なのは,残り時間,全体の状況を見渡し,失点を最小限にする判断でしょう。今回うまくいかなかった人はどこで失敗したかを振り返り,自己をコントロールするための方法を考えておきましょう。

 出だしの問題1で論理操作性が高かった点が平均点を下げている可能性が高いでしょう。しかし,逆に言えば,問題1での消費時間をきちんと計画通りコントロールできれば,何とか点数をまとめられる可能性が出てきたはずです。
  問題2は文章自体はそれほど読みにくくないのですが,やや設問に無理のあるところがあり答えにくい箇所がありました。問題3も表現の仕方に本来幅がある抽象的な内容なので,設問者の解釈の仕方を「読む」必要があり,解答しにくい問題でした。これらの設問者の出題趣旨を考える必要があるという傾向は,日弁連法務研究財団版の試験の傾向を引き継いでいたと言えます。
  問題4は哲学的な内容ですが,実際に読んで見ると読みやすいので,時間管理ができて十分に時間を取ることができた人はしっかり得点できたでしょう。逆に言えば,第3部も,手のかかる問題や曖昧な問題を如何に見切るかが,高得点のためのポイントであったと言えます。
  第2回に向けては,第1回の問題での出題の仕方,設問者の意図をよく分析し,どのような聞き方をしてくるか,を研究しておくとよいでしょう。
  また,第1回では昨年まであった,並び替えの問題や,複数のことがらをまとめて聞く問題がありませんでした。傾向の変化かもしれませんが,第2回で復活する可能性はありますので,警戒は怠らないようにしましょう。

   
 こちらも昨年通りでした。ただ,条件の設定は昨年以前よりも緩かったように思われます。その分,理由(4点以上と指定)について,自分で考え出すことが必要でした。しかし,この「理由」は細かなことでもよかったのです。完璧なものをつくることより,6割から8割の完成度でも時間内に仕上げることを優先すべきです。これも,一段上から自分を管理する視点になります。

 今年度から,2回同様の傾向の試験を受けることができるようになった訳ですから,この点は最大限に活かしましょう。すでに各部の中で触れたように,やはり第1回の問題は十分研究すべき対象です。確かに,終わった試験はもう2度と振り返りたくないのですが,そこは頑張ってもう一度見直してみましょう。
  共通することは,タイムマネジメントの意識です。優先順位の判断でのミスが大きな失点につながっているはずです。この点を反省し,どのように当日自己管理をするかについて,具体的な手順を考えてみて下さい。
  そして,健康管理が大切です。気候が変わりやすくなっています。体調には注意をして下さい。
  皆さんの健闘を祈っています。

   
 
 
第2回試験について
辰已専任講師 石田浩一
 
  適性試験管理委員会による本年第2回目の法科大学院全国統一適性試験が実施されました。昨年度までの2団体による並列実施が一本化された本年度は,その傾向に注目が集まっていましたが,第1回と同じく第2回も昨年度までの日弁連法務研究財団版の適性試験の内容がそのまま引き継がれたものとなりました。
  形式面でいえば,第1回と同じく第1部から第3部まで小問数は24で,ほぼ前年度の日弁連法務研究財団版に倣ったものでした。
  内容的にも,第1回と同じくほとんど前年度までの日弁連法務研究財団版の傾向を引き継ぎました。
  ただ,第1回と第2回では傾向が異なる所がありました。適性試験管理委員会の事前の発表では2回の試験は「同質の試験」(法科大学院全国統一適性試験HPのQ&Aより)とされていましたが,受験生側の実感としてはずいぶん異なるタイプの問題セットになっているように見受けられました。
  難度についてはこの後各部ごとの検討を示しますが,全体としては第1回よりも易化し,昨年度並みの難易度になっていると考えられます。第1回の第1部は文章量が多く時間がかかったため,昨年度よりも難しくなっていましたが,第2回は第1回よりも文章量が減った分若干易化しました。第2部も第1回は数的処理の比率が高かったため,平均点が落ち込みましたが第2回はそれらが無くなった分,受験生にとっては易化でした。第3部は文章量が増えていますが,設問が簡単であっため,全体としては前回と同等の難易度でまとまると思われます。
  第1回に比べ文章量全体が少なかったのですが,さらに演繹的推論に関わる問題が少なかった(問題3,13,20)ために第1回よりも簡単に感じた受験生が多かったと思われます。また,問題3や20は辰已のオープンや模試等では馴染みのパターンの問題ですから,準備をしていた人にとってはむしろラッキーな問題でした。問題13もグループBはb1の意見で結局決まってしまうという点と,全体11人の過半数の6人で実施されるという点さえおさえればよかったので,それほど時間はかからなかったと考えられます。
  反論に関係する問題などを見ても,第1回では数値のはいった議論や実験結果に関する主張についての問題でしたが,第2回目では短めで身近な問題についての出題でした。聞き方にしても,第1回は反論の根拠となりうるもの,といったひねりの加わった出題だったのに対し,第2回は素直に,反論となるもの・ならないものを聞く設問でした。
  また,グラフから導かれる結論を聞く問題18や,背理法の穴埋めをさせる問題23も今までにない形式でした。
このように,第1回と第2回では受験生側からすると,印象の異なる試験となりました。「同質の試験」であるという説明には,やや疑問を抱かざるを得ません。第1回と第2回の問題を同時に作っているならば,いくつかの問題を入れ替えてバランスをとることが可能であったように思います。可能性としては,第1回の結果を見て第2回の問題を調整したことも考えられます。
  第1回と第2回をまとめて,昨年度の問題との比較をすると,以下のような特徴を挙げることができます。
・論理的構造を抜き出す問題が増えた
・文章から導かれる帰結を聞く問題が無くなった
・会話分析に関わる問題が復活した
・明確に資料分析がテーマである問題が復活した
表の読取りが中心となる問題が第1回・第2回とも出題されたのは,大学入試センターと統一した影響が出ているのかもしれません。
  ただ,多少の変化はあるものの,昨年度までの日弁連法務研究財団の出題傾向をそのまま継承したと見るのが妥当でしょう。
  今回の実施結果を検討して修正が加わる可能性はもちろん視野に入れておく必要はありますが,今回の傾向がおそらく来年以降も引き継がれると見るのが妥当でしょう。
  対策としてはまず,形式論理の基礎,典型的な論法・誤謬論の理解が必要です。しかし,単に知識として知っているという段階では十分な結果には結びつきません。なんといっても時間との勝負が問題となる試験です。時間内に解答するためには,単に過去問に一通り触れた程度では不十分であって,それらの背後にある本質を取り出し,徹底的に理解することが必須です。辰已では,論理の本質を明確に抜き出し理解できる講座を提供しています。是非,このような講座を利用して,解法のコツを身につけて下さい。
  第2部も,形式面では第1回から変化はないものの,問題の傾向・難易度の印象は第1回とは大きく変わりました。第1回では数的処理に関する問題が2問出されましたので,今年度からは数的処理が重視されるのかと思いきや,第2回ではこの分野の出題はありませんでした。
  第1問と第3問がタイムテーブルの問題,第2問が1次元配列マッピングとグルーピングのタイプとの融合問題,第4問がグルーピングに関する問題となっていました。タイムテーブルの問題は表の作り方がほぼ決まっているので,扱いやすかったでしょう(もちろん第3問では可能性が複数考えられる(3)以降が考えにくくなっています)。また複数の発言から選手の並び順を推定する第2問も,このようなタイプでの条件の書き出し方を練習していれば,(4)までは順調に処理できたでしょう。この第3問までで,捨てるべき問題を捨てていれば第4問を半分はとることができ,一定の点数を確保できたでしょう。
  第1回の第1問や第4問のような,条件を理解すること自体が困難であるような問題はなかったので,受験生については取り組みやすかったと言えるでしょう。したがって,平均点は第1回よりも上昇するでしょう。
  以上に見るように,第2部でも,第1回と第2回とが「同質の試験」であったとはいいにくいと思われます。このようなばらつきは,今後修正されるのかどうかわかりませんが,どちらか1回しか受験しないのは危険だと考えるべきでしょう。
  対策としては,過去問に含まれる必要な思考の方法を抜き出し,整理した上で,練習して身につける,ということが必要でしょう。個人で問題を分析することは大変ですから,是非辰已の講座等を利用して,思考のコツを身につけることをお勧めします。
  第1問・第3問は共に法哲学関係の文章で,ロースクール小論文入試ではよく扱われるテーマでした。したがって,小論文対策をすでにはじめていた人にとっては少し安心感があったでしょう。しかし,功利主義やコモンズ(共有地)について全く触れたことがない人にとってはやりにくい試験となったでしょう。第2問は理系的な内容ですし,第4問は身近な言葉の扱いであるとはいえ,残り時間の少ない中で正確に読解するには知的なスタミナがかなり必要だったと思われるからです。
第1回との比較でいえば,前回にはなかった並び替えの問題や表題の問題が出されました。また第3問(2)(5)での該当する項目の組合せを答える,という形式はそもそも過去の出題でもあまり見られなかったものです。これらの点でも,第1回と「同質の試験」であったかは疑問の残る出題でした。
  難易度としては,文章量が増えたり,並び替えや表題といった出題があったりしたものの,選択肢を選ぶという点ではそれほど難度は高くありませんでした。したがって,第1回と同等の難易度であったと思われます。
  対策としては,まず文章の趣旨を明確にとらえて速読する力の養成が必須です。これにもきちんとした技術があります。日本語だから読めばわかる,という程度の理解では時間内に解き終わることは難しいでしょう。全体の点数を安定させるには,メリハリをつけながら趣旨をとらえる読み方を身につけていることが必須です。この点でも辰已の講座等を利用することをお勧めします。また,苦手なジャンルを作らないことも大切です。広く知的興味を持ち,教養を広げておくことも大切でしょう。
  2つの立場のどちらをとるべきかで悩む必要はないことを知っておきましょう。このタイプの立論問題で問われているのは,主張を根拠によって合理的に支えることです。したがって,自分が支持しやすいと考えた立場から立論すればよいのです。
  第1回にはなかった,表/グラフの読取りが問われました。2問出題されていた当時の2問を,第1回と第2回に分けて出題したような印象があります。ここでも第1回・第2回を「同質の試験」と主張できるのか,という疑問が生じます。2回受けることを前提として出題しているかのようにさえ思えます。
  指摘してきたように,第1回と第2回とでの試験の質はだいぶ異なるというのが印象です。しかし,全体としては昨年までの日弁連法務研究財団の出題傾向を踏襲した出題となりました。この傾向自体はおそらく今後も続くものと思われます。
 
 
 
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