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■公開:2009年06月19日

参考判例

※ 以下の2つの裁判例は,2009年新司法試験【短答・論文徹底解説】論文・刑事系(平成21年6月14日(日)全国同時LIVE中継)におきまして,辰已専任講師・弁護士 菊地幸夫先生がご紹介した裁判例の判旨です。参考判例として掲載させていただきます。


■ 東京地判昭63.7.27(判時1300号P.153,百選T(第6版)87事件)
〔片面的幇助の成立を認めた事例〕

【判 旨】
「被告人は,本件テーブルの発送手続時点において,右テーブル内にけん銃及びその実包が隠されているかもしれず,Cらがこれを日本に密輸して売り捌くつもりなのかもしれない旨の認識を,未必的に持つに至ったものと認められ,発送手続前においてかかる認識を持っていたものと認めるに足りる証拠はない。一方,被告人がけん銃等の隠匿を未必的に認識した後発送手続終了までの間,C,Aの両名はその場におらず,またE社に同行したAが,この僅かな時間内に被告人の右未必的認識を察知して,けん銃等の密輸行為につき被告人と互いに意思を相通じたと認めるに足りる証拠はなく,被告人の片面的,未必的認識の限度に止まると言うべきである。そして,被告人が本件密輸入に果たした役割をみると,被告人は,本件において,最終的にはC,Aから,DからFへの本件テーブルの受け継ぎと,けん銃等の代金回収という重要な役割を依頼されているが,これを初めて打診されたのは,本件テーブルの発送手続後であり,被告人の来日が最終的に決まり,被告人がけん銃等の隠匿のことをAらから初めて告げられたのは,証拠上は日本国で既に判示密輸入行為を発覚した後であって,本件テーブルの発送手続時には,被告人は右のような重要な役割まで担うことについては認識がなかった。そして,右の来日後の役割を除くと,被告人がけん銃等の調達,隠匿等の実質的行為に関与したという証拠はなく,単に,貨物輸出入運送業者での本件テーブルの発送手続にかかわったのみであり,右発送手続自体もB名義で行われているのであって,被告人の本件への関与は,重要な部分に関するものではあるが,特に被告人でなくともなし得る形式的・機械的行為を行ったにすぎない。加えて,被告人が,発送手続後,来日の報酬として告げられた額も五〇〇ドルで,けん銃等の代金総額三七五万円と比較するとごく一部にすぎないのであって,これらの諸点を併せ考えると,判示けん銃・実包の密輸入行為に際し,これにつき被告人がCらと共謀していたと認めるには未だ証明十分とは言い難く,むしろ,被告人は,CやAらに利用され,本件テーブルの形式的な発送手続を行おうとしたが,右手続中Cらの密輸入行為につき未必的な認識を持つに至ったものの,実兄からの依頼ということもあつて,これを幇助する意思のもとに,そのまま右発送手続を完了させたものと認められる。したがって,被告人には,判示のとおり,検察官が予備的訴因として主張する幇助犯を認めるのが相当である。」

■ 東京地判昭33.6.14(第一審刑事裁判例集1巻6号P.896)
〔@金員騙取の目的で他人を利用して欺罔行為を行った後被利用者が情を知ったが利用者と通謀しないで金員の交付を受けた場合と間接正犯,A間接正犯の被利用者が利用者の意図を超えて行動した場合における利用者の責任,に関して判示した事例〕

【判 旨】
「…被告人丁等の中間介在者は当初Aに対して交付した前記権利証等の一件書類が偽造文書であることを知らなかつたのであるが,そのあつ旋中六月七日頃これを知るに至つたところ,同人等においても『上借り』を企てていたので,Aに対しては右偽造の事実はこれを告知しないで,自己のためにする『上借り』金は勿論被告人甲等のためにする金銭をも併せ騙取することにその方針を決定したことが明らかである。この場合被告人丁等においては右知情前には被告人甲等のためにする金銭に関する限り尠くとも犯意を欠いているから,被告人甲,同乙はそれまでの間丁等を利用してAに対し判示の如き欺罔行為を行わしめた点でいわゆる間接正犯として詐欺罪の実行に着手したものといわねばならない。しかして被利用者である丁等が右の如くその事情を知悉した際には,利用者である被告人甲等のAに対する欺罔行為は既に完了して居り,しかもその後被告人甲等と丁等との間には通謀の成立こそないが,丁等においては依然被告人甲等のためにも金銭を騙取する意図の下に行動したことはこれまた前記認定の事実に徴し明らかである。かかる場合,被告人丁等の右知情後の行動は,判示第二で認定したとおり同人等については詐欺の実行行為と認められるので,見方によつては,この客観的事実を基礎として,被告人甲,同乙の責任はこれをその教唆犯として論ずる見解もないではないが,本件においては,前記認定の如く,被告人甲等のAに対する詐欺罪の実行行為としての欺罔行為は被告人丁等の知情前に既に完了して居り,しかもその知情後に同人等の協力を得たのは単に右欺罔により錯誤に陥つたAより金銭を受領した一点に止まるのであつて,その全体を綜合的に観察するときは,被告人甲等の責任を論ずる見地では,同人等において被告人丁等を一の道具として利用して詐欺を実行したものと観るのが相当である。」
「…全部を一体的に被告人丙等が間接正犯のいわゆる被利用者の立場において被告人甲,同乙の意思を単に伝達し又は敷衍したに止まるものと速断することはできない。むしろ,登記抜きという条件を無視し自己の用途に供するため依頼された金額を遥かに上廻る申込をなしたこと自体(被告人甲等の依頼の正否及び関係書類の真否に関係なく)においてAに対する一種の詐欺として被告人丙等自身の犯意が看取される本件においては,同被告人等のAに対する三百万円の融資申込のうち百万円を超える部分については,最早利用者たる被告人甲等の支配下における単なる道具的行動の延長ではなく,被告人丙等が自己の利益の為独自の意思主体として行動した結果と認むべきである。然らばAに対する融資申込額は形式上三百万円となつてはいるが,百万円を超ゆる部分については被告人甲の行為は相当因果関係がないといわねばならない。」


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