平成30年度 司法試験本試験速報/司法試験/辰已法律研究所

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短答式試験
平成30年 短答式試験【分析】 公開

6/11 13:55

①論文式試験【公法系】 ・第1問 更新 5/30 10:00
  ・第2問 公開 6/1  11:30
②論文式試験【民事系】 ・第1問 公開 6/1  13:45
  ・第2問 公開 6/1  11:30
  ・第3問 公開 6/1  11:30
③論文式試験【刑事系】 ・第1問 公開

6/1  14:35

  ・第2問 公開 6/1  14:35
④論文式試験【選択科目】
・倒産法 更新 6/21 13:30
  ・租税法 更新 6/22 11:20
  ・経済法 更新 6/22 11:20
  ・知的財産法 更新 6/26 11:00
  ・労働法 更新

6/21 13:30

  ・環境法 更新 6/21 13:30
  ・国際関係法(公法系) 更新 6/22 11:20
  ・国際関係法(私法系) 更新 6/21 13:30
 
 ●平成30年 司法試験 短答式試験【分析】
■公開:2018年06月11日/13:55
平成30年5月20日に司法試験の短答式試験が行われました。
司法試験の短答式試験の概要をまとめましたので,ご参考になさってください。
 
☆ 試験日程(平成30年短答式試験)
平成30年5月20日(日) 10:00~11:15(1時間15分) 短答式試験(民法)
12:00~12:50(50分)  短答式試験(憲法)
14:15~15:05(50分) 短答式試験(刑法)
 
☆ 問題数の比較〔注:民法が1問減りました。〕
憲法  20問〔昨年:20問〕
民法  36問〔昨年:37問〕
刑法  20問〔昨年:20問〕
合計  76問
 
☆ 配点の比較〔注:昨年と同じです。〕
憲法  50点満点〔昨年:50点満点〕
民法  75点満点〔昨年:75点満点〕
刑法  50点満点〔昨年:50点満点〕
合計  175点満点
 
☆ 解答欄番号の比較〔注:憲法が3つ増えて,民法が1つ減りました。〕
憲法  №44まで〔昨年:№41まで〕
民法  №36まで〔昨年:№37まで〕
刑法  №36まで〔昨年:№36まで〕
 
☆ ページ数の比較〔注:憲法及び民法が1ページ減り,刑法が1ページ増えました。〕
憲法〔1頁目除く〕  9ページ〔昨年:10ページ〕
民法〔1頁目除く〕 17ページ〔昨年:18ページ〕
刑法〔1頁目除く〕 13ページ〔昨年:12ページ〕
 
☆ 法務省発表による司法試験受験状況
1 出願者数   5,811人〔昨年:6,716人〕
2 受験予定者  5,726人〔昨年:6,624人〕
(1) 受験資格
ア 法科大学院課程修了の資格に基づいて受験する者
  5,284人(92.28%)〔昨年:6,214人(93.81%)〕
イ 司法試験予備試験合格の資格に基づいて受験する者
  442人(7.72%)〔昨年:410人(6.19%)〕
(2) 受験回数
  1回目  2,032人(35.49%)〔昨年:2,269人(34.25%)〕
  2回目  1,254人(21.90%)〔昨年:1,611人(24.32%)〕
  3回目  1,088人(19.00%)〔昨年:1,280人(19.32%)〕
  4回目   815人(14.23%)〔昨年:1,035人(15.63%)〕
  5回目    537人( 9.38%)〔昨年: 429人( 6.48%)〕
3 受験者 5,238人〔昨年:5,967人〕
4 受験率  91.5%〔昨年:90.1%〕
  (注)ここでいう受験率とは,受験予定者に占める受験者の割合です。
5 短答合格者数 3,669人〔昨年:3,937人〕
6 短答合格率  70.0%〔昨年:66.0%〕
7 受験者全体平均点 116.8点〔昨年:113.8点〕
  科目別平均点
  憲法:33.2〔昨年:32.0〕,民法:47.8〔昨年:48.0〕,刑法:35.9〔昨年:33.8〕
8 短答合格者平均点 128.1〔昨年:125.4点〕
9 科目別最低ライン(40%)未満
   憲法 94人〔昨年:222人〕
   民法 375人〔昨年:303人〕
   刑法 159人〔昨年:193人〕
 
☆ 短答合格率等の推移
  受験者数 合格点 短答合格者 合格率
(対受験者)
平成30年度
5238人 108点 3669人 70.0%
5967人 108点 3937人 66.0%
6899人 114点 4621人 67.0%
8016人 114点 5308人 66.2%
8015人 210点 5080人 63.4%
7653人 220点 5259点 68.7%
8387人 215点 5339人 63.7%
8765人 210点 5654人 64.5%
8163人 215点 5773人 70.7%
7392人 215点 5055人 68.4%
6261人 230点 4654人 74.3%
4607人 210点 3479人 75.5%
2091人 210点 1684人 80.5%
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度
平成25年度
平成24年度
平成23年度
平成22年度
平成21年度
平成20年度
平成19年度
平成18年度
   
☆ 平成30年司法試験(短答式試験)の結果(平成30年6月7日法務省発表)
1 受験者数等
 (1) 受験者数   5.238人(途中欠席38人)
 (2) 採点対象者数 5.200人
2 短答式試験の合格に必要な成績
(1) 成績判定
 短答式試験の各科目において,満点の40%点(憲法20点,民法30点,刑法20点)以上の成績を得た者のうち,各科目の合計得点が108点以上の成績を得たものは,短答式試験の合格に必要な成績を得た者とする(平成30年6月7日司法試験委員会決定)。
(2) 受験回数
  対象者  3,669人
  平均点  128.1点
 3 短答式試験の得点
得  点 最高点 最低点 平均点 最低ライン
(40%)未満
合計得点
(175点満点)
167 40
116.8
 
科目別得点 憲法
(50点満点)
48 6 33.2 94人
民法
(75点満点)
75 6 47.8 375人
刑法
(50点満点)
50 6 35.9 159人
 
☆ 全体の傾向について
     全体的な出題傾向は,例年通りといえますが,以下のような変化がありました。
   平均点は,昨年度比では3点上がっているものの,一昨年よりは3点強低くなっております。
   科目別にみると,憲法は,人権分野からの出題が昨年度11問のところ今年度は10問と例年並みでした。もっとも,統治分野からの出題が昨年度の8問から6問と減少した一方で,総論分野からの出題は昨年度の1問から4問(第11問,第12問,第14問,及び第20問)と増加しました。統治及び総論分野については,例年同様に人権分野のような細かい判例知識は問われませんでしたが,短答プロパーの学説や関連法の重要部分が問われました(国会法,日本国憲法改正手続法)。したがって,短答独自の対策の必要性がますます増しているといえます。
   また,判例を問う出題がさらに増加したことも特徴的です。昨年4題出題された特定の最高裁判所の判例を問う出題(判例1個型問題)は2題に減少したものの(第18問及び第19問),同一の人権ないし条文に属する複数の判例を出題したもの(第1問,第2問,第3問,第4問,第6問,第7問,第8問,第9問,第10問,第14問,及び第17問)は,大きく増加しました。判例の結論部分を問う出題が多い点は変わりませんが,それに至る論理や理由付け,さらには複数の判例の相違点(第1問)についても出題されています。

     民法は,出題数が36問となり,昨年より1問減少しました。出題割合では,債権各論が9問から7問に減少し,相続分野が2問から4問に増えた点が主な変更です。例年通り条文知識を中心とする知識を問う問題が出題されていますが,特に,昨年度は判例知識を中心とした問題が多かった債権総論でも,条文知識が多く問われていました。
   複雑な計算を要求される出題はなく,事例問題も減ったものの,物権(第8問,第13問,第15問),相続分野(第34問,第35問)で非常に細かい条文知識を問う問題が出題されており,穴のない学習が求められているといえます。

     刑法は,時間的制約が大きくなりました。出題数自体は,20問と例年通り。また,総論10問,各論10問という出題割合も例年通りでした。しかし,見解問題が昨年度の2問から4問に増加(第1問,第10問,第13問,及び第19問),穴埋め問題も昨年度の2問から3問に増加(第3問,第7問,及び第15問),さらに事例問題が5問出題された他(第7問,第10問,第17問,第19問,及び第20問),単純な正誤問題でも長文の肢が増加しました(第2問,第4問,第8問,第12問,第14問,及び第16問)。
   複雑な事務処理が要求される出題はなかったものの,事例を迅速かつ的確に理解し適切な判断を加えることが求められているといえます。

 
 ●第1問 憲法
■公開:2018年05月18日/19:25
■更新:2018年05月30日/10:00
1 はじめに
      今年の公法系科目第1問(憲法)は,「A市では,性的な画像を含む書籍の販売等の在り方に対し,市民から様々な意見や要望があることを踏まえ,新たな条例の制定が検討されることとなった。この条例の検討に関わっている市の担当者Xは,憲法上の問題についての意見を求めるため,条例案を持参して法律家甲のところを訪れた。」との事案のもとに,甲とXのやりとりが3頁弱にわたり記載されており,次に設問文,最後に【別添資料】として,「善良かつ健全な市民生活を守るA市環境保持条例(案)」が1頁半にわたり掲載されております。頁数は全部で6頁(実質5頁)です。
     そして,問いの内容は以下のものとなります。

「甲:規制の対象となる図書類の範囲や,規制の手段,内容について,議論があり得ると思います。図書類を購入する側と販売等をする店舗の双方の立場でそれぞれの権利を検討しておく必要がありそうですね。図書類を購入する側としては,規制図書類の購入等ができない青少年と18歳以上の人を想定しておく必要があります。また,販売等をする店舗としては,条例の規制による影響が想定される3つのタイプの店舗,すなわち,第一に,これまで日用品と並んで規制図書類を一部販売してきたスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗,第二に,学校周辺の規制区域となる場所で規制図書類を扱ってきた店舗,第三に,規制図書類とそれ以外の図書類を扱っている書店やレンタルビデオ店を考えておく必要があるでしょう。

〔設問〕
    あなたがこの相談を受けた法律家甲であるとした場合,本条例案の憲法上の問題点について,どのような意見を述べるか。本条例案のどの部分が,いかなる憲法上の権利との関係で問題になり得るのかを明確にした上で,参考とすべき判例や想定される反論を踏まえて論じなさい。」

      このように,本問は,当事者の主張,反論,私見を検討させる従来の出題形式を踏襲しませんでした(詳細は問題文を参照して下さい。)。これは,現行司法試験(新司法試験)の開始後初めてのことであり,本試験会場では驚かれた方も多いとのことです。
    このような出題形式が続くのかが気になりますが,今年の7月に実施される予備試験論文式試験憲法の形式や,本司法試験問題の出題趣旨・採点実感等の内容を見る必要があるでしょう。
    なお,本問に関連すると思われる論文として,平成30年司法試験考査委員の曽我部真裕教授の「青少年健全育成条例による有害図書類規制についての覚書」法学論叢(2012)170巻4・5・6号P.499~514があります。
 
2 問題文
    平成30年5月21日(月)に法務省HPにて公開された論文式試験公法系の問題文はこちら。
 http://www.moj.go.jp/content/001258872.pdf
 
3 本問の分析
  (1) 前提
   
  問題文最後の甲の発言に,「図書類を購入する側」(①青少年,②18歳以上の人)と「販売等をする店舗」(③スーパーマーケットやコンビニエンスストア,④学校周辺で規制図書類を扱ってきた店舗,⑤書店やレンタルビデオ店)の双方の立場でそれぞれの権利を検討する必要があることが分かります。そこで,この①~⑤に関係する憲法上の問題点を検討すべきかと思われます。
  また,本条例案は,刑法上の「わいせつ」な文書等に当たらないものも,規制の対象とする以上,規制対象が広過ぎるという問題点があり,「上乗せ条例」に該当します(甲第4発言,X第4発言,甲第10発言,X第10発言)。また,本条例案第7条の規定が明確性を欠くとの指摘も可能です。そこで,「上乗せ条例」の可否及び明確性の原則が問題となった徳島市公安条例事件(最大判昭50.9.10刑集29-8-489)に言及し,どのような場合に合憲となるかを示すとよいでしょう。
  
  (2) 本条例案第8条第1項に関する憲法上の問題点
      本条例案第8条第1項は,通常のスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど,市民が食料品などの日用品を購入するために日常的に利用する店舗における規制図書類の販売や貸与を禁止しています。まず,本条項により規制される店舗側の人権を検討する必要があります。店舗内で図書類を自由に販売する権利とし,表現の自由(憲法21条1項)もしくは営業の自由(憲法22条1項)による保障を受けるかどうかを検討する必要があります。本問では,甲第9発言を受けたX第9発言に,各店舗の売上げに対する影響が記載されており,これらの事情を使うのであれば,営業の自由で書いた方が書きやすいかと思います。その際には,X第9発言やX第10発言を根拠に営業の自由に対する影響を具体的事実に沿って検討できるとよいでしょう(本問との事案の差異を明確にした上で,薬事法違憲判決(最大判昭50.4.30民集29-4-572)などの判例を参照することも考えられます。)。なお,本条例制定の目的として,青少年の健全な育成と,羞恥心や不快感を覚えるような卑わいな書籍等が,それらをおよそ買うつもりのない人たちの目にむやみに触れることがないようにすることもねらいとなっています。この2つの目的との関係で手段が妥当かの検討をする必要があるでしょう。
  次に,「図書類を購入する側」の憲法上の問題点を検討する必要があります。「図書類を購入する側」は,図書類の購入が禁じられる以上,図書類を自由に購入する自由(=表現を受け取る自由)が制約されることになり,この制約の合憲性が問題となります。ここで参考とすべき判例として,岐阜県青少年保護育成条例事件(最判平元.9.19刑集43-8-785)が挙げられます。一般に青少年は判断能力が未熟である以上,青少年を保護するためのパターナリズムに基づく制約が認められるかが問題となります(X第12発言)。本問でもこの点の検討はすべきでしょう。また,本条項は同時に,18歳以上の人の表現の自由をも制約します。しかし,X第12発言にあるように,18歳以上の人にとっては,不便になるということはあっても,市内で規制図書類を一切買えなくなるわけではない以上,規制態様はそれほど厳しくないという反論が可能かと思われます。
  なお,前掲岐阜県青少年保護育成条例事件は,自動販売機による販売であり,対面での販売である本問とは事案が異なることにも言及できるとよいかと思います。
   
  (3) 本条例案第8条第2項に関する憲法上の問題点
      本条例案第8条第2項は学校周辺の規制区域となる場所で規制図書類を扱ってきた店舗において規制図書類の販売や貸与をすることを禁止します。本条例案第8条第1項の場合と同様に,「販売等をする店舗」の権利を検討する必要があります。この際に,どの程度の制約がされるのかは,X第9発言に現れているので,具体的事実を拾って検討する必要があります。X第10発言において「販売等を継続したいのであれば,市内にも店舗を移転できる場所はあるはずです。条例の施行までには6か月という期間を設けてもいます。」とあり,これらが想定される反論といえるでしょう。なお,ここでも,本問との事案の差異を明確にした上で,前掲薬事法違憲判決などの判例を参照することも考えられます。
  次に,「図書類を購入する側」の憲法上の問題点については,本条例案第8条第1項の場合よりも,青少年の健全な育成という目的がより重要になります。この目的を強調する場合には,規制手段が厳しくても合憲となりやすいと思われます。
   
  (4) 本条例案第8条第3項及び第4項に関する憲法上の問題点
      本条例案第8条第3項及び第4項は,規制図書類とそれ以外の図書類を扱っている書店やレンタルビデオ店において,青少年に対する規制図書類の販売や貸与を禁止し,さらに規制図書類を壁と扉で隔てた専用の区画に陳列することなどを義務付けています。第1項や第2項の場合と同じく,「販売等をする店舗」の権利を検討する必要がありますが,第1項や第2項の場合とは異なり,18歳以上の人に販売することは可能です。そのため,規制態様がそれほど厳しくないという反論が想定されるでしょう。また,目的との関係で,内装工事等が必要でそこまでの必要があるのかと疑問視する声(X第11発言)に対する言及も必須でしょう。
   
  (5) その他
      本条例案第8条各項(第4項を除く。)違反の場合,刑事罰が科されるおそれがあります(甲第13発言)。懲役刑も科されるおそれがあることを強調すれば,規制態様は厳しいとの論述をすることが可能となるでしょう。なお,条例における罰則に関する判例としては最大判昭37.5.30刑集16-5‐577)があります。判例が示すように,「条例によって刑罰を定める場合には,法律の授権が相当な程度に具体的であり,限定されておればたりると解するのが正当である。」との論述ができるとよいでしょう。また,本条例案第16条の両罰規定も規制態様としてそこまで必要かに一言言及できるとよいでしょう。
 
4 的中情報★★★
・2018スタ論第2クール開講ガイダンスH30本試験出題大予想と答案戦略公法系
  「平成30年考査委員大幅交代!現考査委員の問題意識と具体的な事案に即した的確な憲法論の展開」福田俊彦先生御担当(素材は,2012スタンダード論文答練(第2クール)公法系1第1問(憲法))ズバリ的中!★★★
    本問は,「青少年保護を理由とした表現の自由又は知る自由の規制」などを論点としており,本問を解かれ講義を聴かれた方には非常に有利であったものと思われます。

・辰已司法試験全国公開模試等開講特別企画
平成30年主要考査委員紹介&出題予想【憲法】小山 剛 慶應義塾大学法学部教授
(原案作成:辰已法律研究所教材チーム(スタ論・全国公開模試等担当),監修:辰已専任講師・弁護士 福田俊彦 先生)★★
    司法試験考査委員の小山剛教授が薬事法違憲判決などを重視していることを紹介しました。
 ●第2問 行政法
■公開:2018年06月01日/11:30
1 はじめに
      今年の公法系科目第2問(行政法)は,「墓地,埋葬等に関する法律」「B市墓地等の経営の許可等に関する条例」などに関する事例のもと,原告適格,行政裁量,行政事件訴訟法10条1項などをテーマとして検討させる出題でした。
    まず,〔設問1〕(1),〔設問1〕(2),〔設問2〕の配点の割合は,35:40:25と問題文冒頭に記載されております。また,問題文の頁数は7頁(実質6頁)で,頁数自体は昨年より減少しています。
    また,出題内容としては,訴訟要件と本案での主張の構成というオーソドックスなものであり,難易度も概ね例年並みであったといえます。但しそれだけに丁寧な論証が求められ,漏れのない答案作成が求められます。
    さらに,本問に関連すると思われる裁判例として,下記のものなどがあります。

 ■東京地判平22.4.16(下記裁判所HP裁判例情報参照)
 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=80814

 ■東京地判平28.10.4(平成26年(行ウ)第586号,判例秘書登載)

 ■東京地判平28.11.16(下記裁判所HP裁判例情報参照)
 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=86850

  
  なお,本問に関連する文献として,平成30年司法試験考査委員である北村生和教授執筆の「演習 行政法」法学教室339号P.138~9(「墓地,埋葬等に関する法律」と行政裁量に関する問題。),北村生和ほか『事例から行政法を考える』(有斐閣,2016)P.120~136(飯島淳子執筆)(「事例⑧ 墓地経営許可をめぐる利益調整のあり方」)があります。

 
2 問題文
    平成30年5月21日(月)に法務省HPにて公開された論文式試験公法系の問題文はこちら。
 http://www.moj.go.jp/content/001258872.pdf
 
3 本問の分析
  設問1(1)
   
  本問では,B市長がAによる墓地経営許可申請に対し,これを認めて許可が出されたが,それに対して近隣の墓地経営者であるDと,本件土地から約80メートルに離れた位置にあるDの土地を障害福祉サービスの事業所として利用したDの親族のEが,本件許可処分の取消訴訟を提起した場合に,D及びEに原告適格が認められるかどうかが問われています。
  まずDは,Aとの関係では,同じ墓地を経営する既存の同業者に当たります。そして,本件許可処分によってAの墓地経営が認められることにより,自らの墓地経営が立ち行かなくなるという経済的な利益侵害の発生が示唆されています。また,Eは本件土地の近隣に事業所を有する者で,本件許可処分によって生活環境及び衛生環境が悪化し,本件事業所の業務上の利益が害されることが示唆されています。
  本問においては,D及びEの原告適格を検討するにあたり,このように主張される利益の侵害について,それが墓地,埋葬等に関する法律(以下「法」という。)の保護範囲に含まれるか,そうであるとして個別的利益であるか一般的公益であるかどうかを行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条2項の考慮要素に基づき判断することが求められます。なお,会議録にある通り,法は墓地経営の許可要件を特に規定していませんが,本件条例はその許可要件や手続について,少なくとも最低限遵守しなければならない事項を具体的に定めたものであり,原告適格の有無を判断する際の検討対象となる法そのもの,あるいは関係法令ということができます。
  法は,墓地の経営が「国民の宗教的感情に適合し,かつ公衆衛生その他公共の福祉の見地から,支障なく行われること」を目的としています。この点について,市としては,国民の宗教的感情に基づき社会慣習として行われる埋葬等の行為が,その取扱いによっては,公衆衛生その他公共の福祉の見地からの制約を受けることが必要とされる場合があることを示したものと解され,そもそも法は,全体としての国民の利益,つまり一般的公益の保護を目的としている,と主張することが考えられます(参照最判平成12.3.17判時1708号62頁)。
  これに対して,本件条例は,経営主体を原則として地方公共団体とし,例外的にB市長が適当と認める宗教法人や公益社団法人等としており(本件条例3条1項),さらにこの場合,設置から3年以上経過していることを求めています(本件条例3条2項)。また,経営許可の申請に際して提出が求められる資料には,墓地経営に係る資金計画書が含まれます(本件条例9条2項5号)。加えて,墓地等の設置場所等の基準として,墓地等の土地については,経営者が当該土地の所有者であることや,所有権以外の権利が設定されていないこと等,墓地の経営に支障がないことも求めています(本件条例13条3項)。この点から,Dに関して,(条例の趣旨・目的を通じて)法は上記の公益の保護のみならず,墓地経営には公益性と安定性が必要であるとして,墓地の経営悪化によってその管理が不十分とならない,つまり経営の安定性もまた墓地経営者の個別的利益として保護していると解することも可能でしょう。
  また,Eに関して,まず,本件条例は,墓地等の設置場所等の基準として,本件事業所である障害福祉サービスを行う施設から一定の距離をとっていることを求めています(本件条例13条1項2号)。この点は,公衆衛生その他公共の福祉の観点から,Eのような事業が支障なく行われることを目的とし,それを個別的な利益として保護していると解することもできるでしょう。さらに,本件条例は,墓地等が飲料水の汚染がない場所に設置することを求め,また墓地の構造設備としては,植栽,雨水等の排水路やごみ処理設備等の設置により周辺の生活環境と調和することを求めています(本件条例14条)。さらに墓地経営に際しては,周辺住民への説明会の開催とその内容等の市長への報告も求められています(本件条例6条)。こうした規定からすれば,法は,墓地の経営に伴う衛生環境の悪化等によって,周辺の障害福祉サービス事業者のみならず,墓地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止し,良好な生活環境を保全することも,その趣旨・目的とし,こうした具体的な利益は,一般的公益の中に吸収解消されることはできないと解することもできるでしょう。そして,本件事業所の利用者が数日間滞在することもあることから,住宅と同様に扱うこともできると主張することも考えられます。
  以上のように,本件で示された事実を丹念に拾い上げ,行訴法9条2項の考慮要素に当てはめて検討することが必要となります(なお,利益の侵害の影響は,本件土地に近い者ほど強くなる傾向があるため,具体的にどの範囲の者に原告適格が認められるかどうかを本件条例(例えば9条2項4号)や利益の性質等から検討することも求められます)。
  
  設問1(2)
      本問では,訴訟要件を満たしていることを前提として,Eが本件許可処分の違法事由としてどのような主張ができるかを考え,そしてこれに対してB市の立場からの反論を検討することが求められます。
  問題文や会議録からは,①Dの経営悪化,②本件条例13条1項の距離制限違反,③周辺住民と同様の生活環境や衛生環境上の損害,④他の実質的経営者の存在,が指摘されています。
  これに対して,上記の通り,法10条1項は墓地の経営について都道府県知事の許可制としていますが,特にその要件を規定していません。これは墓地の経営が,高度の公益性を有するとともに,国民の風俗習慣,宗教活動,各地方の地理的条件等に依存する面を有し,一律的な基準による規制になじみ難いことに鑑み,墓地の経営に関する許否の判断を都道府県知事の広汎な裁量に委ねる趣旨に出たものであると解されます。
  市としては,同様に本件条例13条1項2号の距離制限規定の適用に関しても,Eの事業所が本件土地から周囲100メートル以上離れてはいませんが,Eの移転以前は本件土地の周囲100メートル以内に住宅等の敷地はなく,周辺住民や福祉サービス事業者に衛生環境の悪化による不利益が生ずるとはいえなかったこと,そしてEは特段移転の必要性がないにもかかわらず,Dと協力してD所有の土地に本件事業所を設置したこと,という経緯に照らせば,公衆衛生上その他公共の福祉の見地から支障がないと市長が判断し,距離制限規定を適用しないこととして本件許可処分をしたことは,その合理的裁量の範囲内であり適法である,と反論することが考えられます。
  また,本件墓地の実質的経営者がCであるとの主張に対して,本件条例は,墓地の管理等が国民の宗教的感情に適合し,かつ公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われるとの法の目的に照らして,その経営主体を原則として地方公共団体とし,さらに市長が適当と認める一定の法人も墓地の経営主体となれるとしています。この点,Aは本件土地の取得にあたりCから融資を受けていたこと,また本件説明会において,Cの従業員が協力していたことはありますが,市としては,Aが市内に登記された事務所を有する宗教法人であり,約10年前から所在地に事務所を設置していること,本件土地には所有権以外の権利は設定されていないことから,市長がAを適当な経営主体としたことが著しく合理性を欠き裁量権の逸脱濫用となるとは言えない,と反論することが考えられます。
  加えて,Aの墓地経営によってDの墓地経営が悪化するとのEによる主張に対しては,それがDの利益侵害を主張するものであって,自己の法律上の利益に関係するものではなく許されないということも言えるでしょう(行訴法10条1項)。
   
  設問2
      本問では,設問1(2)とは異なり,B市長が不許可処分を行い,これに対してAが本件不許可処分の取消訴訟を提起した場合に,Aが主張すると考えられる違法事由と,それに対する市側の反論を検討することが求められます。
  この点,会議録からは,本件不許可処分の処分理由として,(ア)本件墓地周辺の生活環境及び衛生環境が悪化する懸念から,周辺住民の反対運動が激しくなったこと,そして(イ)B市内の墓地の供給過剰により,それらの経営に悪影響が及ぶこと,が示唆されています。これに対して,A側からは,本件土地は住宅から100メートル以上離れていて,設置に当たっては周辺の生活環境と調和するよう十分配慮しており,周辺住民に生活環境や衛生環境上の悪影響は生じないこと,説明会の開催は周辺住民に墓地の設置等の計画について周知させるためのものであって,周辺住民の合意を得ることが許可の要件となっていないこと,そして本件条例は専ら墓地経営の申請者の財政状況の審査のための規定が置かれており,既存の墓地経営者への配慮等は法の目的から逸脱していること等から,B市長の判断は,考慮すべき事項を考慮せず,考慮してはならない事項を考慮したものとして裁量権の逸脱濫用に当たると主張することが考えられます。
  B市としては,法の目的に照らして,本件説明会で示された周辺住民からの懸念を解消させるべく努力すべきであって,住民の多くが生活環境と十分に調和するものではないと捉えていること,そして適切な規模で必要な位置に墓地を配置することにより円滑な都市活動を確保し,良好な都市環境を保持すべきであることから,市長が,市民の宗教的感情に適合し,かつ公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障があると判断したことに裁量権の逸脱濫用は見られない等を主張することになるでしょう。
 
4 的中情報★★★
・スタ論スタート2018行政法2(福田俊彦先生御担当)(初出題は,2012スタンダード論文答練(第1クール)公法系2第2問(行政法))ズバリ的中!★★★
  本問は,「墓地,埋葬等に関する法律」に関する上記の東京地判平22.4.16を素材としており,原告適格,行政事件訴訟法10条1項,墓地経営許可処分と裁量の有無及び裁量の逸脱・濫用について問うており,受講生の方には極めて有利であったものと思われます。

・2018直前フォロー答練公法系第2問「原告適格」「行政裁量」★★★
 ●第1問 民法
■公開:2018年06月01日/13:45
1 はじめに
      今年の民事系科目第1問(民法)は,種類物の特定,受領遅滞,危険負担(設問1),所有権に基づく妨害排除請求の相手方(設問2(1)),登記名義の保有と動産引渡義務(設問2?),定期預金債権の共同相続,「相続させる」旨の遺言(設問3)など,民法の全体について比較的著名な論点から出題されました。特に,民法判例百選Ⅰ,Ⅱ及びⅢに掲載されている重要判例の理解及びその射程が多く問われている点が特徴的です。
    問題文は,4頁(実質3頁)で,昨年のような図面などの掲載はされておりません。また,設問数は3つで(設問2は,小問(1)と(2)に分かれています。),設問1から3までの配点の割合は,40:35:25と問題文冒頭に記載されております。
    なお,設問1は,平成29年民法(債権法)改正に関連するテーマであり,また,千葉恵美子・潮見佳男・片山直也編『Law Practice民法Ⅱ【債権編】』(商事法務,第3版,2017)P.41~6「8 種類債務の履行の提供と受領遅滞」(北居功執筆)の事例と類似します。また,設問3の相続法の分野は,平成30年司法試験考査委員の前田陽一教授の関心分野といえます(前田陽一・山本敦・浦野由紀子『リーガルクエスト民法Ⅵ 親族・相続』(有斐閣,第4版,2017)P.314~6(前田陽一執筆),394~5(浦野由紀子執筆)参照。)。
 
2 問題文
    平成30年5月21日(月)に法務省HPにて公開された論文式試験民事系の問題文はこちら。
 http://www.moj.go.jp/content/001258875.pdf
 
3 本問の分析
  〔設問1〕(配点40点)
   1 同時履行の抗弁
      【事実】9には,AとBの主張が記載されています。Bからの本件売買契約に基づく売買代金支払請求に対し,Aは,「Bが松茸5キログラムを引き渡すまで代金は支払わない」と同時履行の抗弁(民法(以下,省略する。)533条)を主張しています。
   
   2 反対債務の履行の提供の継続の再抗弁
       それに対して,Bは,反対「債務の履行の提供」をしたことにより,同時履行の抗弁権が失われるという再抗弁を主張することが考えられます。
   しかし,反対債務の履行の提供があっても,その提供が継続されない限り同時履行の抗弁権は失われないというのが判例(最判昭34.5.14民集13-5-609)の立場です。そのため,判例の立場に従いますと,Bの引渡債務の履行の提供があっただけでは再抗弁にならず,履行の提供の継続までが再抗弁には必要になります。本件では,Bが引渡債務の履行の提供を継続したことは認められません。
   したがって,Bの再抗弁は認められません。
   
   3 目的物の滅失の抗弁(特定の有無)
       次に,売買目的物である松茸5キログラムが滅失した場合において,買主Aの代金支払債務が消滅するかが問題になります。
   本件売買契約では,目的物が松茸5キログラムとして種類と数量だけを指示されていることから,Aの松茸の引渡請求権は,種類物債権(401条1項)となります。仮に特定(401条2項)しているのであれば,本件では松茸が盗まれていることから,松茸の引渡債務は履行不能になります(無限の調達義務の軽減)。そこで,特定の有無が問題となります。
   401条2項は,「物の給付をするのに必要な行為を完了」することで特定が生じると規定しています。本件売買契約では,松茸の引渡しは,B所有の乙倉庫において代金の支払と引換えですることが定められていたことから,Bの松茸引渡債務の法的性質は,取立債務(債務者の住所で引き渡す債務)と認められます。取立債務の場合,特定には2つの要素が必要です。すなわち,①目的物の分離(債務者が給付すべき目的物を他の物と分離し,債権者が取りに来れば,いつでも受領できる状態に置くこと)及び②債権者への通知(そのような状態になったことを債権者に通知して,受け取るように求めること)です。①分離と②通知の双方が必要であり,分離しないまま通知しても特定は生じません(最判昭30.10.18(民集9-11-1642,民百選Ⅱ[8版]1事件)の調査官解説である三淵乾太郎「判解」『最高裁判所判例解説民事篇昭和30年度』(法曹会,1956)P.196及びその差戻審である札幌高函館支判昭37.5.29高民集15-4-282参照)。
   本件では,Bは,松茸を収穫し,松茸5キログラムの箱詰めを終えたことで①目的物を分離したといえます。その後,BがAに電話で連絡することで,②債権者Aへの通知をしたといえます。したがって,BがAに電話で連絡をした時に,目的物の特定が生じます。そして,目的物の特定が生じた後に松茸が何者かによって盗まれたことから,Bの松茸の引渡債務は,履行不能になります。
   そして,目的物引渡債務が消滅すれば,代金支払債務も消滅するのが原則です。
   
   4 受領遅滞の成否
   
(1)
  しかし,Bの松茸引渡債務は,履行不能に基づく損害賠償債務(415条後段)に転化し,履行不能によっても消滅しないのではないでしょうか。
  特定が生じた後の債務者には,目的物の保管につき善管注意義務が生じます(400条)ので,売主Bが松茸5キログラムの保管についての善管注意義務に違反した場合には,Aの引渡請求権は,消滅せず,損害賠償請求権に転化することになります。
  もっとも,【事実】9において,Bは,Aに対し,「一度きちんと松茸を用意したのだから応じられない」と反論しています。本件では,AがBから電話で連絡を受けた後も引取りをしなかったという事情が認められますので,Aが松茸5キログラムの引取りをしなかったことが受領遅滞(413条)に該当し,売主Bの保管義務が軽減されるのではないかが問題となります。
   
(2)
  本問で難しいのは,平成29年9月21日午後8時頃,Aは,今日は引取りに行けないが,具体的なことは翌朝に改めて連絡する旨を電話でBに伝えており,同月22日午前7時頃,Aは,Bに,同日午前10時頃に乙倉庫に引取りに行きたい旨を伝えたことから,Aが車でまずB宅に寄り,Bを同乗させ乙倉庫に行くことになったという点です。
  この事実をどのように評価するかが問題となります。
   
(3)
  1つの考え方として,買主であるAがBに連絡を取り,松茸を引き取りに行く時刻を変更しており,AB間で履行期の変更の合意が成立したと評価することができるでしょう。そうすると,履行期の変更合意が成立した同月22日午前7時以降は,売主であるBはAが引取りに来る(すなわち,現実の提供がある)同日午前10時頃までは善良な管理者の注意義務を負うことになるはずです。すなわち,上記事実をこのように評価する場合には,債権者Aに受領遅滞はないことになります。
   
(4)
  もう1つは,上記事実のうち,平成29年9月21日午後8時頃,Aは,今日は引取りに行けないが,具体的なことは翌朝に改めて連絡する旨を電話でBに伝えた時点で,債権者Aに一旦受領遅滞が生じたとする考え方です。
  ここで,受領遅滞の要件該当性を検討しましょう。
受領遅滞の要件は,①債務者の履行の提供があること,②債権者の受領拒絶があることです。なお,債権者の帰責性を要求する見解もありますが,通説は,これを不要と解しています。
  前述のように,松茸の引渡債務は取立債務ですから,履行につき債権者Aの協力を必要とする債務といえます。また,取立債務は,債権者の債務者方への取立てという「債権者の行為を要する」ことから,「弁済の提供」の方法としては,「弁済の準備をしたことを通知して」「その受領の催告をすれば足り」ます(493条ただし書)。本件では,Bによる弁済の準備をしたことの「通知」とAへの受領の「催告」が認められますので,①債務者の履行の提供があるといえます。
  さらに,Aは,「今日は引取りには行けない」とBに伝えて,実際に松茸を引取りに行っていませんので,②債権者Aの受領拒絶があるといえます。
  したがって,一旦は受領遅滞の要件を満たしていると評価することができます。
  ただ,このように考えた場合でも,翌22日の事情に全く触れないというわけにはいきません。すなわち,Aが引き取れなかった最初の時点でAの受領遅滞を認める構成もあり得るでしょうが,同月22日午前7時までの事情及び同日午前7時以降の事情に全く触れないで,あっさり受領遅滞を認めることは,出題意図からは十分なものとはいえないと思われます。
   
   5 債権者(買主)Aに受領遅滞を認めない場合
   
(1)
  4(3)で述べたとおり,Bは,履行期の変更合意が成立した同月22日午前7時以降は,Aが引取りに来る同日午前10時頃までは善良な管理者の注意義務を負うことになります。
   
(2)
  本問では,Bの履行補助者のCが簡易な錠のみで施錠して乙倉庫を離れたのが,同月22日午前7時頃になっています。そうすると,Cの過失をBの「責めに帰すべき事由」(415条)と同視すれば,この時点ではBは善管注意義務を負っていますから,窃盗が頻繁に起きている地域で松茸という高価な物を保管するには,簡易な施錠をしただけでは,この義務を尽くしたことにはならないでしょう。そこで,特定した松茸の引渡債務は債務者の責めに帰すべき事由によって社会通念上不能になったといえますから,Bの目的物引渡債務は同一性を維持して損害賠償債務に転化します。ですから,この立場では,債権者主義の危険負担(534条2項)は問題となりません。【事実】9では,Bは,「一度きちんと松茸を用意したのだから(Aの請求には)応じられない」と言っていますが,その主張に理由はないことになります。
   
(3)
  もっとも,Aの損害賠償請求権を問題にするとき,Aが被る「損害」とは何でしょうか。50万円分の松茸を手に入れることができない以上,代金相当額が「損害」となりそうです。そうであれば,Aとしては,損害賠償請求権を自働債権としてBの代金支払請求権と相殺すればよいはずです。
   
(4)
  しかし,本問では,Aは,「Bが松茸5キログラムを引き渡すまで代金は支払わない」と述べています。
  これは,論点的にいえば,債権者による種類債務の変更権の問題です。変更権というと,債務者が行使することが通常ですが,債務者に過大な負担を与えないような場合には信義則に照らし債権者も変更権を行使できると解されています。本件は,まだ秋の松茸の収穫期であること,もともと履行不能になったのはB側の帰責事由によることなどを挙げて,債権者であるAの変更権を認めてもよい事案だと主張することが可能です。したがって,Aの「Bが松茸5キログラムを引き渡すまで代金は支払わない」という主張が認められ,Bの本件売買契約に基づく代金支払請求は認められないことになります。
   
   6 債権者(買主)Aに受領遅滞を認める場合
   
(1)
  受領遅滞の場合には,債務者による債権者に対する履行の提供が認められる以上,善管注意義務のような重い義務からは解放すべきです。したがって,この場合には,目的物の保管に要求される義務は,善管注意義務ではなく,自己の財産におけるのと同一の注意義務に留まると解されています。
   
(2)
  本件では,Bが松茸5キログラムを盗まれたことにつき自己の財産におけるのと同一の注意義務に違反したといえるかが問題となります。この問題に関しては,Bは従業員Cに松茸の管理を任せていることから,Cという履行補助者の行為についての債務者Bの責任が問題になります(いわゆる履行補助者の故意・過失の問題)。この点については,大判昭4.3.30(民集8-363,民百選Ⅱ[8版]5事件)があります。たとえば,債務者が債務の履行のために履行補助者を利用したときは,その範囲内における履行補助者の行為は債務者の行為と同視されるなどと考えることになるでしょう。
  この検討に際しては,近隣で農作物の盗難が相次いでいる旨の警察からの注意喚起があったこと,BがCに対し乙倉庫を離れる際には普段よりもしっかり施錠するように指示したこと,Cは当日の夜はBの指示に従い強力な倉庫錠も用いて二重に施錠したこと,Cが翌朝はBからの指示を忘れて普段どおりの簡易な錠のみで施錠したことなどの事情を挙げて,上記注意義務違反の有無を認定することが求められているといえます。たとえば,Bが自己の財産を管理するのであれば,普段どおりの簡易な錠のみで施錠したとしても十分であることを強調して,注意義務違反を否定することができるでしょう。
   
(3)
  上記注意義務違反を認定した場合には,5で述べたように処理すればよいでしょう。
   
(4)
  それに対して,上記注意義務違反を認定しない場合には,Bの松茸の引渡債務は,損害賠償債務に転化することなく,履行不能により消滅します。
  そして,売買契約は双務契約ですので,双務契約において一方の債務が債務者の帰責性がなく消滅した場合に,他方の債務の帰すうについて規律する危険負担(534条以下)の問題になります。
  本件では,前述のように目的物の特定がされていますので,534条2項・1項の債権者主義により,Aはなお反対給付をすべき義務を免れませんので,Bの代金支払請求権は残存することになります。
  よって,Bの本件売買契約に基づく代金支払請求は認められることになるでしょう。
  もっとも,この結論に至った場合,Bの手元にあった松茸が,B側の不注意により盗難に遭って滅失したのに,BはAに対し代金を支払えと主張することの不合理性が問われます。本問は,この点の不合理性をどのように考えるかを問う問題であったと思われます。
   
  〔設問2〕(配点35点)
  小問(1)について
 

  甲トラックは移動が容易な動産ですから,甲トラックがE所有の丙土地に投棄されている事態は,占有侵奪以外の方法により丙土地の物的支配が妨げられている状態と認められます。したがって,Eの撤去の請求は,丙土地の所有権に基づく妨害排除請求といえるでしょう。
  甲トラックを丙土地から撤去するためには,甲トラックを移動しなければならないことから,上記妨害排除請求の相手方は,甲トラックを処分することができる権限を有する者でなければなりません。
 
  本件では,Dは,Aとの間で所有権留保特約付売買契約をしたので,自分は甲トラックを撤去することができないと主張しています。そこで,本件の所有権留保特約付売買契約により,Dの甲トラックの処分権限が否定されるのかが問題となります。
  最判平21.3.10(民集63-3-385,民百選Ⅰ[8版]101事件)は,本件とほぼ同様の所有権留保売買契約がされたほぼ同様といえる事案において,「留保所有権者は,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産が第三者の土地上に存在して第三者の土地所有権の行使を妨害しているとしても,特段の事情がない限り,当該動産の撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,残債務弁済期が経過した後は,留保所有権が担保権の性質を有するからといって上記撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当である」と判示しています。そこで,本件でも,上記判例を参考に本問を検討していくことが求められているといえるでしょう。
  甲トラックの売買契約(以下「甲トラック売買契約」という。)の内容は,60か月の間,毎月4万円を分割払するというものですが,平成30年の段階ではいまだ分割払の途中にあります。また,甲トラックが盗難に遭う前はもとより,盗難後も,Dの銀行口座にはAから毎月4万円の振込みが滞りなくされていたことから,甲トラック売買契約の内容からすると,Aは期限の利益は喪失しておらず,残債務弁済期が到来していません。
  したがって,上記判例の見解に従えば,本件では,「特段の事情」のない限り,Dが甲トラックの撤去義務を負うことはないでしょう。そして,本件では「特段の事情」が認められる事情はないでしょう。
 
 よって,Dの発言は正当であると認められるでしょう。
   
  小問(2)について
 
  Dの発言は正当であるとしても,本件では,DはAに甲トラックを売却した後も自動車登録名義を有していることから,上記発言をDがEに対抗することができるのかが別途問題となります。
 
  最判平6.2.8(民集48-2-373,民百選Ⅰ[8版]51事件)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去・土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすべきである。…もっとも,他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても,引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。」と判示しています。
  しかし,上記判例の事案は,土地所有権に基づく建物収去土地明渡しという不動産の明渡しに関する事案であるのに対して,本件は,土地所有権に基づく甲トラックという動産の妨害排除に関する事案であるという違いがあります。また,上記判例の事案は,登記名義人が不動産の所有権移転登記を他人に備えさせることは容易であったのに対して,本件では,Dは,甲トラックの所有権を留保していることから,Aに登録を移転させることは容易ではありませんでした。したがって,上記判例の射程が当然に本件にも及ぶと解することはできません。
  もっとも,いずれの事案も,土地所有権に基づく物権的請求権の相手方が問題になっており共通性がありますので,上記判例の射程が本件にも及ぶかを検討することが必要でしょう。結論は,どちらもあり得ます
 
  自動車の所有権留保契約においても,土地所有者と留保売主とは対抗関係に類似していること(道路運送車両法5条1項),自動車の登録名義の変更は一般的には容易であること及び建物の所有者以上に自動車の所有者を発見するのは困難であることなどを指摘して,上記判例の射程が本件に及ぶと解する場合には,Dが自動車登録名義を有する以上,Dは甲トラックの所有権の喪失を主張して,Eからの撤去請求を免れることはできないでしょうから,Eの請求は認められることになるでしょう。
  他方で,Aからの売買代金がいまだ完済されていない留保売主Dが自動車登録名義を保有し続けることには合理的な理由があり,Dには自動車登録名義を変更しないことにつき帰責性が認められないことなどを指摘して,上記判例の射程が本件には及ばないと解する場合には,Eの請求は認められないことになるでしょう。
  どちらの立場を採るにしても,重要なことは,上記判例の射程が本件にも及ぶかを検討し,理由を付けて自分の立場を明確にすることと思われます。
   
  〔設問3〕(配点25点)
 


















  本問では,まず,本件遺言について,遺言の解釈をすることが求められています。
本件遺言の②は,Fに対し1200万円の定期預金を相続させる旨記載され,また③は,Gに対し600万円の定期預金を相続させる旨記載されています。
  まず,被相続人が有していた定期預金債権が被相続人の遺産(相続財産)に当たるかが問題になります。この問題については,最近判例が変更されました。すなわち,最大決平28.12.19(民集70-8-2121,民百選Ⅲ〔2版〕66事件)は,「共同相続された…定期貯金債権は,…相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である」と判示し,預貯金債権に関するそれまでの判例である最判平16.4.20(家月56-10-48)(分割債権説・当然分割説)を変更しました(前田陽一ほか『「民法Ⅵ 親族・相続』(有斐閣,第4版,2017)P.314~6(前田陽一執筆)参照)。前掲最大決平28.12.19の見解に従いますと,本件遺言は,特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言ということになります。
  次に,これが遺産分割方法の指定と特定遺贈のいずれに当たるかが問題になります。この問題については,遺言の解釈によることになりますが,最判平3.4.19(民集45-4-477,民百選Ⅲ〔2版〕87事件)は,「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』趣旨の遺言者の意思が表明されている場合,…遺言者の意思は,…当該遺産を当該相続人をして,他の共同相続人と共にではなくして,単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり,遺言書の記載から,その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り,」その財産をその相続人に承継させることを内容とした遺産分割方法の指定であると判示しています。
  そして,「相続させる」旨の遺言は,相続分の指定(902条)を伴う場合が少なくなく,相続分の指定を伴うかどうかも遺言の解釈によります。本件遺言の②のように特定の相続人に与えるとされた特定の財産の額がその相続人の法定相続分を超える場合には,通常は,相続分の指定を伴うものとみるべきであるとされています(前田ほか・前掲書P.395(浦野由紀子執筆)参照)。
  さらに,本件遺言の④は,廃除したHに対し,200万円の定期預金を与える旨記されています。この遺言の有効性が問題になりますが,被廃除者は,欠格者と異なり,被相続人から遺贈を受けることができますので(965条は,892条を準用していません。),被相続人は,廃除の取消し(894条1項,同条2項)をしなくても,被廃除者に相続財産を承継させることができ,遺言は有効と解されます(前田ほか・前掲書P.252(浦野執筆)参照)。本件遺言の④は,特定遺贈と解することになるでしょう。
 
  次に,FがBに対して支払った300万円は,被相続人CがBに対して負っていた金銭債務であり,相続の対象となります。大決昭5.12.4(民集9-1118)は,このような債務について,相続分に応じて,相続人が分割承継するという原則を示しています。この判例の見解に対しては,被相続人の債権者が共同相続人の中に無資力者がいた場合のリスクを負担する結果となって不当であるとか,債務の取立てが煩雑になるといった批判が一部の学説からされています。もっとも,判例の見解と異なり,共同相続人が不可分債務(連帯債務)として,被相続人が負っていた債務を負担することになるという見解を採りますと,被相続人の債権者は,共同相続人のすべての固有財産も含めて,その債権の引当てとすることができることになり,相続という偶然の事情により被相続人の債権者が不当に有利な地位を得ることになってしまうという問題点があると指摘されています。そのため,判例の立場に賛成する見解も有力です。
  それでは,相続債務を分割承継するとした場合には,どのような割合で分割されるのでしょうか。この問題について,最判平21.3.24(民集63-3-427,民百選Ⅲ〔2版〕88事件)は,相続人間においては,指定相続分の割合に応じて相続債務を承継すると判示しています。
  そうすると,本件遺言について,「相続させる」旨の遺言が相続分の指定を伴うと解する場合には,相続債務であるCがBに対して負っていた借入金債務300万円も,指定相続分どおりに受益相続人に承継されることになります。具体的には,FとGに2対1(1200対600)の割合で承継されますので,Fが200万円,Gが100万円を承継します。なお,Hは,廃除されていますので,相続権は剥奪されており,相続債務も承継しません。
  このように考えますと,借入金債務300万円を全額支払ったFは,Gに対し,不当利得(703条)に基づく返還請求として,Fが承継した200万円を超える100万円の支払を請求することができるでしょう。
 
4 的中情報★★★
・2018スタ論第2クール開講ガイダンスH30本試験出題大予想と答案戦略民事系
「民法(債権法)改正から予測する平成30年論文本試験民法-解答時間不足(途中答案)回避策も含めて-」原 孝至先生御担当(素材は,2012スタンダード論文答練(第2クール)民事系2第1問(民法))ズバリ的中!★★★
本問は,「種類物の特定と危険負担」などを論点としています。したがって,講義を聴かれ,本問を検討された方には,非常に有利であったものと思われます。

・辰已司法試験全国公開模試等開講特別企画
平成30年主要考査委員紹介&出題予想【民法】
前田陽一立教大学大学院法務研究科教授
(原案作成:辰已法律研究所教材チーム(スタ論・全国公開模試等担当),監修:辰已専任講師・弁護士 福田俊彦 先生)ズバリ的中!★★★
考査委員の前田陽一教授に関する情報として,下記のように記載致しました。
「前田教授は,親族・相続の基本書として近時評価の高い,前田陽一・本山敦・浦野由紀子『リーガルクエスト民法Ⅵ 親族・相続』(有斐閣,第4版,2017)の著者の1人です。前田教授の主な執筆部分は,婚姻,相続の対象,遺産の共有と分割,遺留分などであり,「財産法との交錯領域」を多分に含んでいます。たとえば,同書の中では,…「『特定の不動産を相続させる』旨の遺言と対抗問題」(P.396~7)を検討することをお薦めいたします。」
  
・スタ論スタート2018民法3(福田俊彦先生御担当)★
本問では,設問の1つで相続させる旨の遺言について出題していました。この分野のリーディングケースである前掲最判平3.4.19についても解説していますので,学習が薄くなりがちな相続法の分野で他の受験生に差を付けることができるという意味で有利であったと思われます。

・2018司法試験絶対合格直前早まくり講座民事系民法(福田俊彦先生御担当)
「Theme4:非典型担保」★★
上記テーマにおいて所有権留保を取り上げ,前掲最判平21.3.10を取り上げました。理解が容易ではないこともあって学習が薄くなりがちな分野である担保物権法の分野で他の受験生に差をつけることができるという意味で有利であったと思われます。

・2017辰已司法試験全国公開模試民事系第1問(民法)「『相続させる」旨の遺言」
★★

 ●第2問 商法
■公開:2018年06月01日/11:30
1 はじめに
     今年の民事系科目第2問(商法)は,会計帳簿閲覧請求(設問1),株主総会決議取消しの訴え,株主代表訴訟,利益供与(設問2),相続人に対する株式の売渡請求(設問3)などを検討させております。問われている論点には,若干マイナーなテーマも含まれております。
   まず,問題文は4頁(実質3頁)で,添付資料等はありません。また,設問は1から3で構成され,配点の割合は,25:50:25と問題文冒頭に記載されております。
   なお,設問1に関しては,平成30年司法試験考査委員の松井秀征教授執筆の伊藤靖史他著『事例で考える会社法』(有斐閣,第2版,2015)P.323~335が非常に参考になります。
 
2 問題文
    平成30年5月21日(月)に法務省HPにて公開された論文式試験民事系の問題文はこちら。
 http://www.moj.go.jp/content/001258875.pdf
 
3 本問の分析
  〔設問1〕
    Dによる閲覧請求の法的根拠は,会社法(以下法令名略。)433条1項に基づく会計帳簿閲覧請求権と考えられることから,甲社としては,同条2項に列挙されている拒否事由に基づく主張をすることになるでしょう。
      まず考えられる主張としては,1号に基づく主張が挙げられます。
  Dは,保有する株式の買い取りをAに求め,これが拒否されると,総勘定元帳等の閲覧請求をするとともに,株式買取請求を重ねて求めていることからすると,Dは,株式買取請求の交渉材料として閲覧請求をしていることが考えられます。そこで,交渉材料としての閲覧請求が,「権利の確保又は行使に関する調査以外の目的」での請求として,1号に該当するのではないかが問題となるでしょう。
  この点,『新基本法コンメンタール会社法2(第2版)』P.344には,「大阪地判11.3.24判時1741号150頁は,大株主による会計帳簿閲覧・謄写請求が,利益配当以外の方法による利益供与を求める会社との交渉を有利に運ぶための手段として行われていることを理由に,株主の権利の確保・行使に関する調査を目的とするものでないとして,その請求を斥けている」とあることから,上記主張が認められる余地はあるでしょう。
      次に考えられる主張としては,同項3号に基づく主張が挙げられます。
  3号に基づく主張をするためには,請求者Dが甲社の業務と実質的に競争関係にある事業を営むものに該当するかが問題となります。
  検討にあっては,Dが乙社の全株式を保有する事実をどう評価するのかがポイントとなるでしょう。また,同項3号に当たるというためには,乙社が,甲社の業務と「実質的に競争関係にある事業」を営むことが必要です。本問では,甲社と乙社はハンバーガーショップを営むこと,甲社は関東地方のP県内に店舗を有するのに対し,乙社は近畿地方のQ県内に店舗を有すること,甲社はQ県に出店する予定はないこと等の事実を踏まえて乙社が「実質的に競争関係にある事業」と営むものであるかを検討することになるでしょう。
  さらに,Dは,Aの取締役としての損害賠償責任の有無の検討のために必要であるとして閲覧請求をしています。かかるDの閲覧請求の動機が,3号該当性の検討に影響を与えるかも問題となります。この点,3号の拒絶事由があるというためには,当該株主が当該会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り,当該株主に会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要しないとする判例の見解(最判平21.1.15民集63-1-1,会社法百選78事件)によれば,上記乙の閲覧請求の動機は,3号該当性の検討に影響を与えないことになります。
   
  〔設問2〕
  1 小問(1)
 
(1)
  本件決議1に関するCの立場での主張とその当否について
  Cは,本件決議1の取消しの訴えに関し,本件決議1の決議「方法が…定款に違反」(831条1項1号)することを主張することが考えられます。すなわち,本件契約は株主の権利行使に関する財産上の利益供与(120条1項)を内容とする無効なものであるから,本件契約(3)に基づいてなされた代理人AによるDの議決権行使は無権代理行為として無効であり,したがって,本件決議1はCの解任要件を満たしていないため,取消事由が認められるという主張です。
  まず,本件契約の内容が違法な利益供与に該当するかについて検討します。最判平18.4.10(民集60-4-1273,会社法百選(第3版)14事件)は,株式譲渡は「株主の権利…の行使に関し」には該当しないのが原則であるが,「会社から見て好ましくないと判断される株主が議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的」がある場合には例外的に該当すると判示しています。本件では,代表取締役Aは,取締役Cの解任決議案について反対を表明しているDの権利行使を恐れ,GにDの保有株式の買取りを持ち掛けていることから,「株主の権利を行使することを回避する目的」が認められ,DからGへの株式譲渡が「株主の権利…の行使に関し」に該当する余地があります。また,本件契約(2)によれば,甲社によるDからの借入債務の保証は,無償であったところ,この保証料は60万円を下回らないものであったことからすれば,「財産上の利益の供与」であるといえます。したがって,本件契約の内容は,違法な財産上の利益供与に該当すると言えるでしょう。
  そして,会社法は970条において利益供与を犯罪と位置づけており,犯罪行為を行うことを内容とする本件契約は,公序良俗違反(民法90条)として無効になると解すれば,本件契約(3)に基づきなされた,AによるDの議決権の代理行使は,無権代理行為として無効となるでしょう。
  そして,甲社の定款では,取締役の解任決議は,株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行うことが定められているところ,AによるDの議決権の代理行使が無効だとすると,AとBの賛成だけで本件決議1が可決されたとするのは,決議の方法が甲社の定款規定に違反する場合(831条1項1号)に当たることになるでしょう。
  以上が,本件決議1に関して,Cの立場での主張及びその当否の検討です。
なお,Cの主張の当否との関係で,裁量棄却の有無(会社法831条2項)を検討することも必要です。
 
(2)
 本件決議2に関するCの立場での主張とその当否について
   
  まず,Cは,本件決議2の取消しの訴えに関し,本件決議2について「特別の利害関係を有する者が議決権を行使」したことで「著しく不当な決議がされた」(831条1項3号)ことを主張することが考えられます。すなわち,本件決議2は,Aの解任決議に関するものであることから,Aは「特別の利害関係」人であり,A本人としての議決権行使及び代理人としての議決権行使によって,本件決議2という「著しく不当な決議がされた」との主張です。
  この主張に関しては,まず,Aが「特別の利害関係」人に該当するのかが問題となります。「特別の利害関係」の意義を明らかにした上で,該当性を検討することが求められているといえるでしょう。なお,最判昭42.3.14(民集21-2-378)は,特定の株主がその株主の地位を離れて純粋に個人的な利害関係を有するにすぎない場合には特別利害関係人に当たるが、会社の株主として会社の支配ないし経営の参加に関する事項について利害関係を有する場合は特別利害関係人に当たらないと解した上で,株主である取締役は,当該取締役の解任に関する株主総会の決議に関しては,特別利害関係人に当たることを否定しています。
  しかし,仮にAが「特別の利害関係」人に該当すると解したとすると,次に,本件決議2が「著しく不当な決議がなされた」といえるのかが問題となります。
さらに,最判平28.3.4(民集70-3―827)は,ある議案を否定する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えの適否について,これを不適法と判示していることから,この判例を踏まえて検討することができれば,より充実した論述となるでしょう。
   
  また,本件において,Aは,Cが提案理由としてAの不正なリベートの受取について説明しようとした際,これを制止し,直に採決に移っていることから,議案提出権(304条)ないし議長の権限(315条)との関係で,「決議の方法が法令…に違反」する(831条1項1号)との主張も考えられるでしょう。この場合には,前述のごとく,主張の当否との関係で裁量棄却の有無(同条2項)を検討することを要するでしょう。
  2 小問(2)
 
(1)
  Aに対する責任追及に関するCの主張及びその当否
  株主Cは,所定の手続を経て,Aに対して,120条4項または423条1項に基づく取締役の責任について,責任追及等の訴え(株主代表訴訟)(847条1項)を提起することが考えられます。
   
  利益供与
  前述のように,本件契約の内容は違法な財産上の利益供与に当たるところ,甲社の代表取締役Aは,本件契約に基づく連帯保証契約の締結の承認に係る取締役会決議において,当該取締役会決議に賛成した取締役であるか,または当該議案を提案した取締役であることから,当該利益の供与に関与した取締役(会社法施行規則21条2号)として,甲社に対して,供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負います(120条4項)。
  本件では,甲社は,Gの丙社からの借入債務について,無償で連帯保証をしていますが,仮に甲社が保証料の支払を受けてこのような保証をする場合には,保証料は60万円を下回らないとされているので,Gに供与された財産上の利益は少なくとも60万円であると認められます。
   
  利益相反取引
  甲社が本件契約に基づきGの丙銀行に対する借入金債務を連帯保証したことが,利益相反取引(間接取引)に該当するかが問題となります。356条1項3号は,株式会社が取締役の債務を保証すること「その他取締役以外の者との間で株式会社と取締役との利益が相反する取引をしようとするとき」を,間接取引として規制しています。本件では,甲社は代表取締役Aの債務ではなく,Aの友人であるGの債務を保証するものです。しかし,Aは,対立するCの取締役解任議案についてDが反対し否決されることを恐れ,友人GにD保有株式の買取りを持ち掛け,Gが丙銀行からD保有株式の買取資金を借り入れることができるように,甲社がGの丙銀行に対する借入金債務を連帯保証しています。したがって,本件連帯保証契約の締結は,丙銀行との間で,甲社と代表取締役Aとの利益が相反する取引をする場合に当たる可能性があります。
  上述したように,仮に本件連帯保証契約の締結が利益相反取引に当たると解する場合には,取締役会設置会社である甲社においては,本件連帯保証契約の締結について取締役会の決議を要しますが(365条1項),甲社においては,事前に適法な取締役会決議を経ているので手続上の瑕疵はありません。しかし,主債務者であるGが借入金債務を弁済できなかったことから,甲社が保証債務を弁済し,結果的には甲社に800万円の損害が生じています。
  したがって,Aは,356条1項の取締役として,その任務を怠ったものと推定され(423条3項1号),任務懈怠責任を負うことになります(同条1項)。
   
  〔設問3〕
 


















  まず,設問には「会社法第174条の趣旨を踏まえつつ」とあることから,同条の趣旨から考えてみますと,同条の趣旨は,非公開会社における企業承継を円滑に進めることにあると考えられます。すなわち,非公開会社にあっては,株式譲渡の場合とは異なり,相続や合併といった一般承継による株式取得の場合には,会社の承認は不要(134条4号参照)となることから,売渡請求権を規定することで,一般承継の場合にも,会社にとって好ましくない者が株主となることを排除する余地を認め,企業承継を円滑に進められるようにすることが,174条の趣旨です。
  そうすると,仮にBがAの株式を承継したとしても,甲社の企業承継が円滑に進むと言えるのであれば,同条の趣旨に反することはないので,本件請求の効力を否定することができそうです。
  本件では,Bは,設立時の株主であり,甲社の取締役であること,これまで甲社に特段の損害を生じさせるなどの事情がみられないことからすれば,Bは,非公開会社である甲社にとって好ましくない者とはいえません。したがって,Bが,A所有株式を相続により全て承継取得したとしても,甲社の企業承継の円滑性を害することはなく,174条の趣旨には反しないといえます。
  そこで,Bとしては,甲社株式を相続しても174条の趣旨には反しない旨の主張をすることになるでしょう。
  次に,かかるBの主張を,具体的にどの様に主張するのかを考えてみます。
   
(1)




  174条に基づく売渡請求権は,会社の閉鎖性維持のために,相続人等の一般承継人に対する売渡請求権を,形成権として認める強力な手段ですから,無制限に認められるべきではありません。そこで,上記174条の趣旨とは関係なく,会社の支配権争いにおいて特定の株主を排除する目的で売渡請求がなされた場合には,権利濫用(民法1条3項)に当たり,売渡請求権の効果が否定されるとの主張が,まず考えられます。
   
(2)
  また,175条2項は,売渡請求の対象となる株式を有する者の株主総会(同条1項)における議決権行使を否定しているところ,上記174条の趣旨とは関係なく,会社の支配権争いにおいて特定の株主を排除する目的で売渡請求がなされた場合には,売渡請求の対象となる株式を有する者の議決権行使は否定されず,したがって,175条1項の株主総会の決議取消事由(831条1項1号)が認められるとの主張も考えられます。
  この点,山下友信『会社法コンメンタール4』(商事法務,2009)P.125には,175条2項における議決権排除の問題点が指摘されており,この問題意識によれば,上記株主総会決議取消事由に関する主張も十分成り立ち得ると考えます。
 
  最後に,Bの主張の当否について考えてみます。
  まず,前述のごとく,Bが甲社株式を相続しても174条の趣旨には反しないといえるでしょう。
  そして,Cは,Bから取締役を退任して相談役として支援することを依頼されたのに対し,自ら代表取締役社長の地位にとどまりたいと考えていること,また,分配可能額との関係では,甲社株式450株全てについて売渡請求できたにもかかわらず,あえて自らが甲社の総株主の議決権の過半数を確保するために最低限必要な,401株についてのみ売渡請求していることからすれば,会社の支配権争いにおいて特定の株主を排除する目的で売渡請求がなされた場合に該当するといえるでしょう。
  以上より,Bの主張は認められるといえるでしょう。
 
4 的中情報★★★
・2018スタンダード論文答練(第2クール)民事系1第2問(柏谷周希先生ご担当)「会計帳簿の閲覧請求」ズバリ的中!★★★
若干マイナーなテーマである「会計帳簿の閲覧請求」についてズバリ的中致しました。受講生の皆様には,非常に有利であったものと思われます。

・辰已司法試験全国公開模試等開講特別企画
平成30年主要考査委員紹介&出題予想【商法】松井秀征 立教大学法学部教授
(原案作成:辰已法律研究所教材チーム(スタ論・全国公開模試等担当),監修:辰已専任講師・弁護士 福田俊彦 先生)ズバリ的中!★★★
司法試験考査委員の松井秀征教授に関して,「松井教授は,伊藤靖史ほか『事例で考える会社法』(有斐閣,第2版,2015)の著者の一人でもあります。松井教授が執筆した事例④は,平成29年司法試験論文式試験問題の設問1に類似する事例問題といえます。そのような観点から分析しますと,事例⑯「<設問1>会計帳簿閲覧謄写請求と拒絶事由」及び「<設問2>株主名簿閲覧謄写請求」は,平成30年に出題される可能性があるかもしれません。」と記載されております。
 ●第3問 民事訴訟法
■公開:2018年06月01日/11:30
1 はじめに
     今年の民事系科目第3問(民事訴訟法)は,重複起訴の禁止,管轄(設問1),文書提出義務(設問2),補助参加(設問3)など,民事訴訟法の著名な論点を問うております。全体の難易度は若干高めかと思われます。
   まず,問題文は頁(実質4頁)で,昨年より頁数は多くなっております。また,設問は1から3で構成され,配点の割合は,40:30:30と問題文冒頭に記載されております。添付資料等は,掲載されておりません。
   また,設問2に関する参考文献として,井上治典「文書提出命令(1)―第三者の所持する診療録(東京高決昭59.9.17判批)」『民事訴訟法判例百選Ⅱ(新法対応補正版)』P.292~3,安西明子(平成30年司法試験考査委員)『民事訴訟における争点形成』(有斐閣,2016)の「第2部 文書提出命令」があります。さらに,設問3に関する参考文献として,笠井正俊(平成30年司法試験考査委員)「補助参加の利益に関する覚書」河野正憲・伊藤眞・高橋宏志編『民事紛争と手続理論の現在(井上治典先生追悼論文集)』(法律文化社,2008)があります。
 
2 問題文
    平成30年5月21日(月)に法務省HPにて公開された論文式試験民事系の問題文はこちら。
 http://www.moj.go.jp/content/001258875.pdf
 
3 本問の分析
  〔設問1〕
    1 課題(1)
  (1)   まず,AがBを被告として乙地裁に訴えを提起することの適法性については,問題文中の「Bの訴えが既に提起されて訴状がAに送達されたこととの関係で」,「まず,Bの訴えの訴訟物を明示して,それが,Aが起こそうとしている訴えの適法性にどのように関わってくるのかを考える必要があります。」という箇所から,重複起訴の禁止(民事訴訟法(以下,省略する。)142条)に抵触しないかが問題となります。
  本問におけるBの訴えである不法行為に基づく損害賠償債務不存在確認訴訟の訴訟物は,不法行為に基づく損害賠償請求権のうち150万円を超える部分で,Aが起こそうとしている不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の訴訟物とその部分は同一です。また,両訴えの当事者も同一です。そのため,原則として,Aの訴えは,重複起訴禁止に抵触し,不適法却下となります(和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』(商事法務,2012)P.51~2参照)。
  ただし,Aが同じ不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を反訴提起した場合には,重複起訴の禁止に抵触しません(最判平16.3.25民集58-3-753参照)。
  したがって,AがBを被告として乙地裁に反訴を提起する場合には,重複起訴の禁止に抵触せず,適法といえます。
    (2)   次に,前述のように,Bに対する訴えをBの訴えに対する反訴によるべきだとすると,Cを共同被告とすることができるかが問題となりますが,Cは本訴原告でないので反訴の被告とすることができず,訴えの主観的追加的併合によるべきです(秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法Ⅲ』(日本評論社,2008)P.217~8)。
    2 課題(2)
      この場合,課題(1)と異なり,本件事故発生地である乙市の管轄権を有しない甲地裁には,不法行為の裁判籍による土地管轄(5条9号)が認められません。
  しかし,甲地裁には義務履行地の裁判籍による管轄が認められます(5条1号)。
  重複起訴禁止との関係については,AにはBとCとを共同被告として訴える利益(自由)があり,それをBの訴えによって妨害することはできないと考えて,これに抵触しないと解することもできるように思われます。このように考えれば,AがBとCを共同被告とする訴えを甲地裁に提起することは,適法といえます。
  〔設問2〕
 
 1
  本問は,文書提出命令の申立てに当たって,Aの診療記録(以下「本件診療記録」という。)について,D病院に文書提出義務(220条各号)があるといえるかが問題となります。
 
  まず,本件診療記録は,AとD病院との間で締結された診療契約に基づく診療の結果を記載したもので,かつ,D病院が所持していることから,220条1号及び2号には該当しません。
 
  次に,Dからは,診療記録は,法令上義務付けられた作成の目的が診療行為の適正を確保するところにあり,診療行為の当事者である医師及び患者,医療機関,患者の家族などの利益のために作成されたといえ(伊藤眞『民事訴訟法』(有斐閣,第5版,2016)P.427),不法行為に基づく損害賠償請求訴訟における当該患者(原告)の相手方(被告)の利益のために作成された文書ではありませんから,利益文書(220条3号前段)には該当しないという反論が考えられます。
  この点については,患者が挙証者である場合には,当該患者の診療記録は利益文書に当たるが,薬害等を理由とする損害賠償請求訴訟における被告となった製薬会社や国等が挙証者となる場合には,利益文書には当たらないとする学説及び下級審裁判例(東京高決昭59.9.17高民37-3-164〔民訴百選Ⅱ〔新法対応補正版〕128事件〕)と,当たるとする下級審判例(東京高決昭56.12.24下民32-9~12-1612等)があります(和田・前掲書P.347,高橋宏志『民事訴訟法概論』(有斐閣,2016)P.203~4)。
  本問では,Dに提出義務があるとする立論をするため,上記東京高決昭56.12.24等を参照することが有益です。
  同判例では,「当該文書の内容に直接関係する者との間で,当該文書に関し,実質的に密接な利害関係を有し,又は有するに至った者がある場合において,その者が訴訟上当該文書を利益に援用する必要性が大であり,かつ,当該文書を開示することによって関係者が受ける法益侵害の程度が軽微であると認められるとき」,利益文書に当たると判示しています。
  この判例を前提とすれば,Aが,BとCによる交通事故により負傷し,D病院の診療を受けたと主張していることから,Bが,本件診療記録に関し,実質的に密接な利害関係を有するに至った者といえます。そして,Bにとって,本件事故と治療及び後遺症との因果関係を争う上で,本件診療記録を援用する必要性が大きく,かつ,既にA自身が本件診療記録のうちの一定の診療記録の写しを書証として提出している以上,Aの受ける法益侵害の程度が軽微であると認められます。
 
  次に,本件診療記録は,「医師・・・が職務上知り得た」(197条1項2号)患者Aに関する情報が記載されていることから,D病院の黙秘義務が原則として認められます。そこで,D病院からは,本件診療記録が220条4号ハに該当するという反論が予想されます。
  しかし,患者に関する情報が,既に請求原因等での主張や証拠として提出されている場合には,当該患者自身が,そのプライバシーの利益を放棄したと考えられ,医師の黙秘の義務も免除されたと解されます(松本博之=上野泰男『民事訴訟法』(弘文堂,第8版,2015)P.513,名古屋高決平25.5.27)。
  また,金融機関の顧客が訴訟の当事者として開示義務を負う情報は,金融機関が訴訟手続で開示しても黙秘義務に反しないと考えることもできます(最決平19.12.11民集61-9-3364(民訴百選〔4版〕A23事件))。
  本問では,前者の考え方によれば,Aの訴訟代理人L1は,B及びCとの間で争いのある損害額を証明するため,Aの後遺症に関するD病院の医師作成の診断書及びD病院での一定の診療記録の写しを書証として提出していることから,A側が自ら患者Aに関する診療情報を開示しているといえ,D病院の黙秘義務は免除されたといえます。
  したがって,220条4号ハに当たりません。
  また,本件診療記録は,一定の場合には患者の閲覧等に供されることも前提とされていると考えられることから,220条4号ニにも当たりません。
  他の同号イロホにも当たる事情は見受けられません。
  よって,D病院の反論は認められず,本件診療記録は,220条4号に該当します。
 
  以上により,D病院には,本件診療記録について提出義務があるといえます。
  〔設問3〕
 

  本問では,BがAのCに対する請求について補助参加する旨の申出をするとともに控訴を提起したのに対して,Cは異議を述べ,この控訴は不適法であると主張しています。その理由として,(ア)第一審で補助参加をしていなかったBがAのために控訴をすることはできないこと,(イ)Bにはこの訴訟への補助参加が許されないので控訴をすることもできないことという二つの理由を挙げています。以下では,それぞれの当否を検討します。
 
  (ア)第一審で補助参加をしていなかったBがAのために控訴をすることはできない旨の主張の当否について
  45条1項本文は,「補助参加人は,訴訟について,・・・,上訴の提起・・・をすることができる。」と規定し,43条2項は,「補助参加の申出は,補助参加人としてすることができる訴訟行為とともにすることができる。」と規定しています。
  したがって,Bは,第一審で補助参加をしていなかったとしても,補助参加の申出とともに控訴をすることができるので,Cの主張(ア)は認められないことになります。
 
  (イ)Bにはこの訴訟への補助参加が許されないので控訴をすることもできない旨の主張の当否について
  補助参加に対して当事者が異議を述べた場合,補助参加の利益が要求されます(44条1項)。これは,補助参加が訴訟関係の複雑化,訴訟遅延という不利益を当事者に与える可能性があるため,当事者が異議を述べた場合には,参加申出人が参加することに十分な利益を有する場合に限り補助参加を認める趣旨です。
  補助参加の利益は,参加申出人が訴訟の結果について利害関係を有する場合に認められます(42条)。このような利害関係は,他人間の訴訟の結果が,参加申出人の法的利益に対して,事実上の影響を及ぼす場合に認められると解されています(三木浩一ほか『民事訴訟法』(有斐閣,第2版,2015)P.559)。ここでいう「訴訟の結果」の意味については争いがあり,判決主文中の判断,つまり訴訟物である権利関係の存否についての判断のことを指すという見解(訴訟物限定説)と理由中の判断も含むとする見解(訴訟物非限定説)があり,後者の見解が現在の多数説となっています。
  訴訟物限定説によった場合,AのCに対する請求はAのBに対する請求の論理的前提にはなりませんが,BのCに対する求償請求の論理的な前提になると考えるとすれば,Bの参加の利益は肯定されるでしょう。
  また,訴訟物非限定説によった場合,共同不法行為者間の求償は過失割合に従って定められることを前提にすると,BはCの過失に利害関係を有します。Cの過失は理由中の判断ですが,主文を導くのに必要な判断であり,「訴訟の結果」に当たります。そして,Cに過失がないとすると,共同不法行為がないことになるため,Bは実体法上,Cに対して共同不法行為責任に基づく不真正連帯債務の内部的な負担部分を求償することができなくなり,この不利益は補助参加人Bの法的地位です。そして,被参加人AのCに対する請求棄却判決によりBはCに求償できなくなるから,この訴訟結果は,事実上,Bの上記地位について論理的に影響するといえます。よって,Bは「訴訟の結果について利害関係を有する」といえ,補助参加の利益が肯定されます。最判昭51.3.30判時814-112(民訴百選〔5版〕A32事件)も,本問と類似した事案について補助参加の利益を肯定しています。
  そうすると,Cの主張(イ)は認められないことになります
 
  以上のように考えると,Cの主張(ア)及び(イ)はそれぞれ認められず,丙高裁の受訴裁判所はこの控訴について適法であると判断すべきことになります。
 
4 的中情報★★★
・辰已司法試験全国公開模試等開講特別企画
平成30年主要考査委員紹介&出題予想【民事訴訟法】
安西明子 上智大学法学部教授
(原案作成:辰已法律研究所教材チーム(スタ論・全国公開模試等担当),監修:辰已専任講師・弁護士 福田俊彦 先生)★★
司法試験考査委員の安西明子教授の関心分野は,「『宗教団体紛争』,『文書提出命令』及び『訴訟承継』にあると思われ,平成30年司法試験の出題予想としては,「文書提出命令」及び「訴訟承継」が挙げられます。」と記載しております。

・2018辰已司法試験全国公開模試民事系第2問(民事訴訟法)
「補助参加の利益」ズバリ的中!★★★
本試験問題設問3の「補助参加の利益」につき直前期に確認でき,受講生の皆様には極めて有利であったと思われます。
 ●第1問 刑法
■公開:2018年06月01日/14:35
1 はじめに
     昨年の刑事系第1問(刑法)は,事例に基づき,甲及び乙の罪責について,具体的な事実を摘示しつつ論じさせる出題形式であったところ,今年の刑事系第1問(刑法)は,冒頭「次の【事例】を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までについて,具体的な事実を指摘しつつ答えなさい。」と記載されており,また,設問によっては反論まで論じさせています。出題形式が大きく変更されました。なお,設問形式にするのであれば,行政法や民事系科目のように,配点割合を付して欲しかったとの受験生の声もあります。
   そして,名誉毀損罪(設問1),不真正不作為犯(設問2(1)),殺人罪と保護責任者遺棄罪の区別(設問2(2)),不真正不作為犯における作為義務の錯誤(設問3)などがテーマとして挙げられます。また,問題文は4頁(実質3頁)で,添付資料等の掲載はありません。
   なお,「作為義務」に関しては刑法学界,とりわけ平成30年司法試験考査委員の潮見淳教授の関心分野であったものと思われます(潮見淳「特集『作為義務』の各論的検討」の「共同研究の趣旨とまとめ」刑法雑誌56巻2号(2017)P.265~270,同じく同特集の小林憲太郎「過失犯における注意義務と『作為義務』」P.271~282,伊藤渉「詐欺罪における告知義務と『作為義務』」P.283~291,十河太朗「身分犯と『作為義務』」P.292~304,松尾誠紀「真正不作為犯における『作為義務』」P.305~318参照。)。
 
2 問題文
    平成30年5月21日(月)に法務省HPにて公開された論文式試験刑事系の問題文はこちら。
 http://www.moj.go.jp/content/001258874.pdf
 
3 本問の分析
  〔設問1〕
 
 1
  乙が,PTA役員会において,「2年生の数学を担当する教員がうちの子の顔を殴った。」と発言した行為につき,丙の名誉を毀損したとして,名誉毀損罪(刑法230条1項)の成否を検討します。
 
  まず,事実の摘示は公然となされる必要があるところ,PTA役員会の出席者は,乙を含む保護者4名とA高校の校長であったことから,「公然」の要件を満たすかが問題となります。
  ここで,「公然」とは,摘示された事実を不特定又は多数の人が認識しうる状態をいいます。判例は,摘示の直接の相手方が特定少数人であっても,その者らを通じて不特定多数人へと伝播する場合,公然といいうると解しています(大判昭6.6.19刑集10-287など)。この判例によれば,乙の発言の相手方が4名であっても,校長の調査を通じてA高校の教員25名全員に丙の暴力についての話が広まっていることから,「公然」の要件を満たすといえるでしょう。
 
  次に,摘示される事実は,それ自体として,人の社会的評価を低下させるような具体的事実でなければならないところ,乙の発言では「丙」と明示的に特定されていないことが問題となります。
  摘示された事実において被害者が明示的に特定されていなくても,他の事情を含め総合的に判断して特定可能であれば足ります(東京地判昭32.7.13判時119-1など)。A高校2年生の数学を担当する教員は丙だけであったというのですから,本問の乙の発言でもその対象が丙であることが特定できます。また,教員が生徒を殴ったという事実は,教員の社会的評価を低下させるものといえます。
 
  以上より,乙には名誉毀損罪が成立しえ,公益を図る目的もなかったことから,刑法230条の2の真実性の証明による免責は認められません。もっとも,乙は,息子の甲の話を信じて上記発言をしていることから,免責の余地はないかが問題となります。
  学説の多くは,誤信したことに相当な根拠がある場合に処罰を否定し,これに対し,相当な根拠がない軽率な誤信の場合に処罰するという結論を採っており,そのような結論に至る理論構成としては,錯誤論のアプローチ,違法論のアプローチ,過失論のアプローチがあります。判例は,刑法230条の2の規定は,人格権としての個人の名誉の保護と憲法21条による正当な言論の保障との調和をはかったものというべきであり,これら両者間の調和と均衡を考慮するならば,たとい刑法230条の2第1項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも,行為者がその事実を真実であると誤信し,その誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らし相当の理由があるときは,犯罪の故意がなく,名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である,としています(最大判昭44.6.25刑集23-7-975,刑法百選Ⅱ〔第7版〕21事件)。この判例によると,乙は甲のうその話を簡単に信じていることから,犯罪の故意がないとはいえないでしょう。
  〔設問2〕小問(1)
 

  甲が,いったんは意識を取り戻して立ち上がったが再度転倒した乙の救助を一切行うことなく,その場からバイクで走り去った行為につき,不作為による殺人未遂罪(刑法203条,199条)が成立するとの立場からの説明について検討します。
 
  不作為を犯罪の実行行為というためには,不作為者に作為義務と作為可能性・容易性が認められなければなりません。作為義務及び作為可能性・容易性が肯定される場合の不作為が,作為義務違反として,不作為による実行行為となります。
  ここで,作為義務がどのような場合に認められるかが問題となります。
  この点については学説上争いがあります。
  結果へと向かう因果経過を具体的・現実的に支配した点に求め,不作為者は,自己の意思で事実上の排他的支配を設定したこと,また,自己の意思によらない場合には,事実上結果を支配する地位が生じたことから,作為すべきという規範的要素を考慮することによって,作為義務発生の根拠を求める見解(排他的支配領域説)があります。この見解から本問を検討すると,本問では,乙が倒れていた場所は,街灯もなく,夜になると車や人の出入りがほとんどない山道脇の駐車場であり,また,乙が再び転倒した場所は,山道及び同駐車場からは倒れている乙が見えず,さらにすぐそばが崖となっており,崖から約5メートル下の岩場に転落する危険があった上,甲が乙を発見したのが午後10時30分頃で,そこには甲以外誰もいなかったのですから,甲には事実上結果を支配する地位が生じているといえ,作為義務が認められます。
  また,多数説は,法令,契約,先行行為,排他的支配及び保護の引受けは,それぞれが作為義務の根拠となりえますが,そのうちのどれか一つだけで作為義務が肯定(または否定)される場合のすべてを説明するのは困難であり,これらの根拠を総合的に考慮し(多元説),問題となる不作為を作為の実行行為と同視できるかという観点から,作為義務の有無を判断するほかないと考えます。判例もシャクティ事件において,先行行為及び保護の引受け,排他的支配を根拠に作為義務を認めています(最決平17.7.4刑集59-6-403,刑法百選Ⅰ〔第7版〕6事件)。この多元説によっても,甲乙間には親族間の扶助義務(民法730条)があり,かつ,上記のように本問では排他的支配が認められるので作為義務を肯定する結論を導くことは可能です。
  そして,乙が崖近くで転倒した時点では,乙の怪我の程度は軽傷であり,そのことを認識していた甲は同駐車場に駐車中の乙の自動車の中に乙を連れて行くことができ,また,それは容易に行うことができました。
  よって,甲の不作為は,殺人の実行行為性が認められます。
 
  その後,乙は崖下に転落して重傷を負っていますが,甲が乙を自動車の中に連れて行くなどすれば乙が崖下に転落することを確実に防止することができたのですから,因果関係も認められます。
 
  そして,甲は乙が転倒した場所のすぐそばが崖となっており,崖下の岩場に乙が転落する危険があることを認識していたのですから,故意も認められます。
 
  以上のような説明により,甲には不作為による殺人未遂罪が成立すると考えられます。
   
  〔設問2〕小問(2)
      保護責任者遺棄等罪(同致傷罪を含む。)と不作為による殺人未遂罪との区別について,殺人罪の作為義務と保護責任者遺棄罪の保護責任は程度が異なるとし,置き去りが客観的に殺人罪の実行行為と同価値とみなされないならば,たとえ故意があっても殺人罪は成立しないとする見解によると,【事例2】における甲の罪責につき不作為による殺人未遂罪が成立するとの立場は,不作為者である甲が先行行為によって法益侵害の危険を創出したわけでもないのに事実上結果を支配する地位が生じたことから作為義務を発生させているが,本問の甲の不作為は作為による殺人罪の実行行為と同価値とはいえず,保護責任者遺棄等罪(同致傷罪を含む。)にとどまるとの反論が考えられます。
  また,判例・通説は,保護責任と作為義務とを同一視し,遺棄致死罪と不作為による殺人罪とは殺意の有無により区別しています(大判大4.2.10刑録21-90)。この見解によると,甲は,乙の怪我が軽傷であるが,崖下の岩場に転落する危険があることを認識していますので,殺人の認識は認められます。しかし,甲は,乙から顔を複数回殴られ叱責されたことを思い出して乙を助けることをやめただけで,怪我が軽傷であると認識している以上,死の認容まではなく,殺意が認められず,保護責任者遺棄罪(同致傷罪を含む。)にとどまるとの反論が考えられます。
  すなわち,反論の方法は,作為義務が認められないという方法と,故意がないという方法の2つが考えられます。
  
  〔設問3〕
      甲には無関係の丁を救助する義務は認められないので殺人未遂罪は成立しないとの主張に対し,甲に同罪が成立すると反論するには,どのような構成が考えられるでしょうか。
甲の不作為が丁に対する実行行為といえるためには,丁に対して作為義務が認められる必要があります。「親に生じた危難について子は親を救助する義務を負う」という立場を前提としたとしても,丁は親ではないからです。この点,刑法は行為規範により法益を保護するものであり,事前的・予防的な法益保護を目指すものであるとするならば,一般人も丁を乙と誤認する可能性が十分に存在し,甲も丁を乙と誤認している以上,一般人の立場から親とみえる状況があるので予防的に作為義務を課すことができると考えられます。このように考えて初めて,親でない丁に対して,「親に生じた危難について子は親を救助する義務」を負わせることが可能となります。このように,甲には重傷を負った丁を救助する作為義務があり,また,作為可能性・容易性も認められることから,不作為による殺人罪の実行行為性が認められます。また,丁は一命を取り留めているので殺人未遂という結果も発生しています。また,丁の怪我の程度は重傷であり,そのまま放置されれば,その怪我により死亡する危険があったのですから,甲が救助すれば結果回避が可能であったといえるので因果関係も肯定されます。よって,甲は殺人未遂罪の客観的構成要件に該当します。
  もっとも,甲は乙に対し死んでも構わないと思っていたところ,実際は丁に対し不作為による殺人未遂という結果が発生しており,丁に対する故意が認められるかが問題となります。
  この点について判例は,「犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく,両者が法定の範囲内において一致することをもって足りるものと解すべきである」として法定的符合説を採っています(最判昭53.7.28刑集32-5-1068,刑法百選Ⅰ〔第7版〕42事件)。
  本問では,甲は,丁の体格や着衣が乙に似ていたこと,山道脇の駐車場に乙の自動車が駐車されていたこと,夜間で同駐車場には街灯がなく暗かったことから,丁を乙と誤認しています。たしかに,同駐車場には,負傷した乙が倒れており,甲が,丁を救助するために丁に近づけば,容易に乙を発見することができたとしても,甲と同じ立場にいる一般人でも丁を乙と誤認する可能性が十分に存在したのですから,甲の誤認は客体の錯誤といえます。この場合,上記見解によると,認識事実と発生事実は,ともに不作為による殺人罪の構成要件に属するから故意を阻却せず,甲には丁に対する故意も認められ,丁に対する殺人未遂罪が成立します。
 
4 的中情報★★★
・2018直前フォロー答練刑事系第1問(刑法)
「不作為犯の作為義務」「不作為による殺人罪と保護責任者遺棄致死罪の区別」
ズバリ的中★★★
  本問は,上述のように「作為義務」が平成30年司法試験考査委員である塩見淳教授の関心分野と思われたことから,本試験直前期である本答練で敢えて出題し,ズバリ的中致しました。受講生の皆様には,非常に有利であったものと思われます。

・辰已司法試験全国公開模試等開講特別企画
平成30年主要考査委員紹介&出題予想【刑法】
塩見 淳 京都大学大学院法学研究科教授
(原案作成:辰已法律研究所教材チーム(スタ論・全国公開模試等担当),監修:辰已専任講師・弁護士 福田俊彦 先生)ズバリ的中★★★
  「塩見教授は,近時,刑法雑誌56巻2号(2017年)の「特集『作為義務』の各論的検討」の「共同研究の趣旨とまとめ」P.265~270を執筆されています。この特集は,他に,小林憲太郎「過失犯における注意義務と『作為義務』」P.271~282,伊藤渉「詐欺罪における告知義務と『作為義務』」P.283~291,十河太朗「身分犯と『作為義務』」P.292~304,松尾誠紀「真正不作為犯における『作為義務』」P.305~318があり,論文式試験で出題されそうなテーマが多い特集といえます。」と記載されております。

 ●第2問 刑事訴訟法
■公開:2018年06月01日/14:35
1 はじめに
     今年の刑事系科目第2問(刑事訴訟法)は,事例を読んで〔設問1〕から〔設問2〕まで解答させる問題で,設問数は昨年と同じです。
   そして,ビデオ撮影の適法性(設問1),伝聞法則(本件メモ,本件領収書)(設問2)を検討させています。難易度としては,例年並みだったと思われます。
   また,問題文は5頁(実質4頁)で,【資料1】として「本件領収書」が,【資料2】として「本件メモ」が添付されております。
   なお,設問1のビデオ撮影の適法性については,平成30年司法試験考査委員の池田公博教授の解説(「写真・ビデオ撮影(特集つまずきのもと刑事訴訟法)」法学教室364号P.10~14)があります。また,設問2の伝聞法則に関しては,同じく平成30年司法試験考査委員の堀江慎司教授執筆の宇藤崇・松田岳士・堀江慎司『リーガルクエスト刑事訴訟法』(有斐閣,第2版,2018)P.370~386,「伝聞証拠の意義」井上正仁・酒巻匡編『刑事訴訟法の争点』(有斐閣,2013)P.166~9が参考になります。また,設問2の領収書の事例は,古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』(有斐閣,第2版,2015)P.337~347の事例に類似します。
 
2 問題文
    平成30年5月21日(月)に法務省HPにて公開された論文式試験刑事系の問題文はこちら。
 http://www.moj.go.jp/content/001258874.pdf
 
3 本問の分析
  〔設問1〕
   1 下線部①の捜査の適法性について
 
 
  まず,捜査①が,いかなる令状も取得されずに行われていることを前提に,強制処分にあたるかどうかが問題となります。
  最初に強制処分の定義を示す必要があります。参考となる判例として,最高裁昭和51年3月16日第三小法廷決定(刑集30巻2号187頁)が挙げられます。この判例で挙げられている「個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など,特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段」という定義を示し,捜査①で制約されるのは,個人のプライバシー権となることを示す必要があるでしょう。撮影の対象が平屋建ての建物から公道に出てきた時点での人物であることから,プライバシー権は一定程度放棄されているので,要保護性は下がるということを踏まえる必要があるでしょう。
  強制処分該当性が否定される場合,任意処分として許容されるかどうかを検討する必要があります。この場合も同じく前掲昭和51年決定が参考になります。規範としては,「必要性,緊急性なども考慮したうえ,具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるもの」というものが考えられます。本件では,Vによる詳細な供述があること,本件領収書が存在すること,本件領収書に記載された住所には実際にA工務店の事務所が存在すること,被害金額が100万円と高額であることなどから,証拠保全のため,捜査①を行う必要性は肯定されるでしょう。また,あくまで公道上の撮影であること,撮影時間は20秒間であることなどから,本件捜査①の相当性も認められるかと思います。
  以上より,捜査①は任意処分としても許容されることとなります。
    
   2 下線部②の捜査の適法性について
 
  捜査②も,捜査①と同様に,いかなる令状も取得されずに行われていることを前提に,強制処分にあたるかどうかが問題となります。
  強制処分の定義は捜査①と同様のものでよいでしょう。ただ,本件では捜査①とは異なり,公道ではなく,しかも本来内部を覗くことを想定していない採光用の小窓を通して本件事務所内部を撮影していることから,プライバシー権の要保護性は低いとはいえません。もっとも,あくまで,本件事務所の小窓を通して見える範囲に限り撮影していることを考えると,プライバシー権の制約の程度はそれほど大きくはないとの評価も可能でしょう。適法,違法どちらの結論になるとしても,捜査①との比較は必須となります。
  仮に,強制処分該当性が否定される場合,捜査①の場合と同じく任意処分として許容されるかどうかを検討することになります。捜査②の必要性に関しては,捜査①の撮影では,犯人が判然としなかったこと,甲が赤色の工具箱を持って本件事務所に入っていったこと,赤色の工具箱についてはVも供述しており,甲が持っていた工具箱に「A工務店」と書かれたステッカーが貼られているかどうかを確認する必要があることを検討する必要があります。また,本件撮影方法が相当かどうかに関しては,向かい側のマンションの管理人に断った上での撮影であること,約5秒間の撮影であること,甲の姿は映っていなかったことなどを評価する必要があります。
    
  〔設問2〕小問
   1 小問1について
 

  本問では,下線部③の本件メモの証拠能力を検討する必要があります。本件メモは、Vが自署したものであり、Vの息子Wの眼前において手書きで作成されていることから、署名押印がなくてもVの供述書であると言えます。
  そこで、検察官Qが主張する立証趣旨は,「甲が,平成30年1月10日,Vに対し,本件メモに記載された内容の文言を申し向けたこと」とあります。検察官は、本件メモの記載内容によって、①V方を訪問した男が記載通りの供述をしたことと、②その訪問者である男性が甲であることを立証しようとしていることが分かります。
  ①の点については、男性の発言内容が真実か否かに無関係であり、男性の発言を聞いたVの知覚、記憶、叙述等が正確であるかどうかだけが問題となるので、非伝聞であるといえます。
  ②の点については、本件メモ自体には「発言者が甲である」とのV自身の供述さえありません。したがって、本件メモだけでは、②の事実の立証は不可能と言わざるを得ないといえます。もちろん、収集されたその他の証拠と合わせると、訪問者が甲であると推認することは可能となりますが、本件メモによってのみ推認できる事実の範囲、すなわちその証拠能力は、「甲が申し向けた」との事実までは及ばないと言わざるを得ません。
    
 
 2 小問2について
 
  下線部④の本件領収書の証拠能力について,本件領収書は、プリンターで印字されたものであり、その末尾の「A工務店 代表 甲」という記載の後に甲と刻された認め印が押捺されていること、そこから検出された指紋が甲の指紋であること、認め印が甲の事務所で押収された印鑑の印影と合致していることから、甲が作成したものと推認できるので、甲の供述書であるといえます。
  検察官は、その立証趣旨を「甲が平成30年1月10日にVから屋根裏工事代金として100万円を受け取ったこと」であるとしていますが、そこで本件領収書によって推認できる事実(要証事実というか立証事項というかは別として)としては、①100万円を授受した人物が甲であること、②甲には詐欺の犯意があることが考えられます。
  ①については、本件領収書の記載内容の通りに100万円を受領した旨の甲の供述が記載されているところ、授受の事実が真実であるか否かにかかわるのであるから、伝聞証拠であるといえます。証拠能力を認めるためには,伝聞例外の要件を満たす必要があります。具体的には,被告人甲の発言内容の真実性が問題となるので,324条1項・322条1項の要件を満たせば証拠能力が認められることになります。本件供述内容は被害者の処分行為の存在を基礎付けるものであり,公訴事実を基礎付ける方向に働く以上,「被告人に不利益な事実の承認を内容とする」供述といえます。そして,被害者であるVに対してなされたものであり,任意性を疑わせる事情はありません。以上より,324条1項で準用する322条1項の要件を満たすことになります。したがって,伝聞例外の要件を満たし,証拠能力は肯定されることになります。
  次に、②の点ですが、甲が授受した100万円が「屋根裏工事代金として」受領したという事実が認められると、客観的には工事がなされていないことが証明できることから、100万円の受領理由が存在しなかったことを甲が認識していたという事実を推認することができます。この場合には、100万円の受領名目が「屋根裏工事代金として」であったか否かが問題となることから、伝聞証拠となります。
  そして、この場合も、①と同様、甲にとって不利益事実の承認となる場合ですから、324条1項、322条1項によって証拠能力を認めることができると考えられます。
なお,古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』(有斐閣,第2版,2015)P.340では,「領収書には,異なる2面の『証拠としての価値』が混在している,つまり,①その記載内容(金員を受領した事実)の真実性を証明するための証拠としての価値のほか,②領収書は,そのような記載のあるものとしての存在自体が有する固有の証拠価値があるのではないだろうか…。…後者②の場合は,領収書の有する証拠価値の場合を,内容の真実性を前提としないで,『そのような記載のある領収書の存在自体』(『領収書の存在と記載内容自体』と言い換えても同じ)に見出すものであり,非供述証拠であって伝聞証拠にはあたらないと考えられないだろうか。」として,領収書が非伝聞と考えられる場合について記載されています。
 
4 的中情報★★★
・2018辰已司法試験全国公開模試刑事系第2問(刑事訴訟法)
「ビデオ撮影」「伝聞証拠の意義」ズバリ的中★★★
今年の辰已全国公開模試が捜査法・証拠法ともにズバリ的中致しました。両テーマとも考査委員の関心分野を考慮して,敢えて全国公開模試で出題致しました。直前期に復習できた受験生の皆様には極めて有利であったものと思われます。

・2018直前フォロー答練刑事系第2問(刑事訴訟法)
「伝聞法則における領収書」ズバリ的中★★★
本試験問題と同じく領収書の証拠能力を問うており,今年の直前フォロー答練は,刑法に引き続きズバリ的中致しました。

・辰已司法試験全国公開模試等開講特別企画
平成30年主要考査委員紹介&出題予想【刑事訴訟法】
(原案作成:辰已法律研究所教材チーム(スタ論・全国公開模試等担当),監修:辰已専任講師・弁護士 福田俊彦 先生)ズバリ的中★★★
池田公博 神戸大学大学院法学研究科教授
「『特集 つまずきのもと刑事訴訟法 写真・ビデオ撮影』法学教室364号P.10~14
このテーマも,実際に出題されるとうまく書けないことがあります。したがって,ご自身の立場を確立させ,具体的な事実に基づいたあてはめを書けるようになっておいてください。」と記載されています。

堀江慎司 京都大学大学院法学研究科教授
「先日改訂された宇藤崇ほか『リーガルクエスト刑事訴訟法』(有斐閣,第2版,2018)では,堀江教授が「伝聞法則」を含む「第4章 証拠法」の部分を執筆されており,初版から分かりやすいと評価が高いものでした。特に,「第3節 伝聞証拠の証拠能力」(P.370~416)は,同書の白眉ともいえます。時間がない方でも,コラムの「要証事実・立証事項・立証趣旨」(P.378)や「犯行計画メモの証拠能力」(P.384~6)は,非常に説得力があって分かりやすく記述されていますので,一読されることをお薦めいたします。堀江教授は,「公判外供述を内容とする同じ証拠であっても,伝聞法則の適用があるか否か-伝聞か非伝聞か-は,その証拠によって何を証明(推認)しようとするのか,すなわち『立証事項』が何かによって変動する。」(P.377)と説明されるとともに,「むしろ端的に,当該証拠によって何を証明しようとするのかという意味で『立証事項』という語を用いるほうがよい(あるいは『推認事実』とするほうがより適切かもしれない)。」(P.378)と説明されます。堀江教授は,「要証事実」という概念が多義的であること等を理由に,「立証事項」や「推認事実」という概念を用いることを提唱されています。」と記載されております。

・2018司法試験刑事訴訟法出題大予想(本試験初日公開教材)ズバリ的中★★★
伝聞法則に関する旧司法試験平成22年刑事訴訟法第2問(伝聞法則に関する事例問題)(解答例は新庄健二先生ご監修)を掲載。

・2018スタ論第2クール開講ガイダンスH30本試験出題大予想と答案戦略刑事系
「刑事訴訟法も考査委員大幅交代!毎年のように出題される『伝聞法則』の基礎的理解の習得」柏谷周希先生御担当(素材は,2016スタンダード論文答練(第2クール)刑事系3第2問(刑事訴訟法))ズバリ的中!★★★


 
 ●倒産法
■公開:2018年05月22日/17:00
■更新:2018年06月21日/13:30
1 はじめに
     例年通り,破産法と民事再生法から1題ずつ,かつ,倒産実体法と倒産手続法の双方に渡る出題がされました。
   倒産実体法については基本的な問題に加えて,応用的な論点(「賃料債権への物上代位後の寄託請求の可否」,「破産財団から放棄された財産を目的物とする別除権放棄の意思表示の相手方」)が出題され,また,倒産手続法については,受験生によっては学習が行き届いていないと思われる分野について,試験会場で条文を参照し,要件の検討及びあてはめをすることが求められました。このように,試験会場での論理的思考力,対応力が求められた点は例年の出題傾向に沿ったものと言え,難易度は例年並みと考えられます。
 
2 問題文
    法務省HPにて公開された論文式試験選択科目の問題文はこちら。
 
3 本問の分析

〔第1問〕
1 設問1について
   小問(1)について,敷金返還請求権は明渡しを停止条件として具体的に発生することから,停止条件未成就の段階では敷金返還請求権を自働債権として賃料債務と相殺することはできないとの考え方が一般的です。この場合,賃借人Dとしては,破産法70条後段により,破産管財人に対し弁済額の寄託を請求することができます。本問では,寄託請求が保全の手段になる理由として,明渡しにより敷金返還請求権が具体化した際の相殺及び,寄託金の返還請求の法的構成についても指摘すべきと思われます。
   小問(2)では,賃借人Dが,賃貸人A社の破産管財人にではなく,物上代位を行使してきた抵当権者Cに賃料を支払う場合に破産法70条後段が適用されるかについて論じることになります。差押債権の第三債務者の地位は,差押えにより変わらないとの立場,破産法70条後段の寄託請求は破産財団が弁済を受領することが前提であり,賃料が抵当権者に支払われる場合には破産法70条後段を適用する前提を欠くとして賃借人は破産管財人に対して寄託請求できないとの立場,担保余剰がある場合は抵当権者への賃料弁済により抵当権の被担保債権が減り破産財団の実質価値が増えるから破産管財人に寄託請求できるとの立場など,合理的な理由を付して自分の考えを論じる必要があります。
2 設問2について
   小問(1)では,まず,破産財団に所属する財産を放棄する場合には,破産管財人は裁判所の許可を得る必要があります(破産法78条2項12号)。破産財団から放棄された本件不動産は破産管財人の管理処分権が及ばなくなり,A社に帰属することとなります。
   小問(2)では,別除権者が破産手続において行使できる破産債権の額について「不足額責任主義」(破産法108条1項本文)について説明した上で,E信用金庫がとるべき手続について論じることになります。具体的には,裁判所への債権届出の際に予定不足額を届けた上で,最後配当に関する除斥期間内に別除権を放棄して,破産管財人に対して不足額を証明しなければならない点を指摘することになります。本問では既に本件不動産は破産財団から放棄されているため,E信用金庫が別除権の放棄の意思表示を誰に行うべきかが問題となります。判例によれば,破産管財人Xを相手方とすべきではなく,また,旧代表取締役Bも本件不動産に関する管理処分権を失っていることから,清算人に対して意思表示を行うべきとされています(最決平成12年4月28日判時1710号100頁,最決平成16年10月1日判時1877号70頁)。

〔第2問〕
1 設問1について
   小問(1)では,総権利行使見込額の15%を占めるF社は民事再生への協力をしない旨の意向を示しているものの,総権利行使見込額の30%を占めるE銀行及び総権利行使見込額の10%を占めるG社が民事再生に対して積極的な反対の意向は示していません。これらの点を踏まえ,A社に民事再生法25条3号の再生手続開始申立棄却事由があるか,具体的には「再生計画案の…可決の見込み…がないことが明らかであるとき」に該当するか否かの検討が求められています。
   小問(2)では,G社が再生手続開始申立後にA社に卸した食材の代金の回収に不安を抱いています。再生手続開始後のA社の仕入れにより生じるG社の債権は共益債権となりますが,再生手続開始申立後,再生手続開始前の仕入れに関する債権は原則として再生債権となります。そこで,A社としては,民事再生法120条1項,2項により,G社からの仕入れにより生じるG社の請求権を共益債権化するための裁判所の許可又は監督委員Dの承認を得ることが考えられます。
2 設問2について
   小問(1)では,民事再生手続における否認権行使の手続きについて,監督委員Dが裁判所からA社が行った代物弁済について否認権を行使する権限の付与を受けて(民事再生法56条1項),監督委員Dが否認権を行使する必要がある点を指摘します(民事再生法135条1項)。また,このような手続を採ることが必要とされる理由について,管財人と監督委員とで再生債務者財産に対する管理処分権の有無に違いがあることを指摘しつつ論じる必要があります。
   小問(2)では,まず,G社としては,B社長の財産が費消されることを防ぐために,B社長の財産に対する保全処分の申立を裁判所に対して行うことが考えられます(民事再生法142条1項,3項)。その上で,G社は,B社長の責任に基づく損害賠償請求権の査定を申立てることにより(民事再生法143条1項,2項),B社長の責任を追及することが考えられます。

 
4 的中情報★★★
〔第1問〕
・2018司法試験全国公開模試(倒産法)第1問
 「破産手続における停止条件付債権の取扱い」★★★
・2018選択科目集中答練第7回(倒産法)第2問
 「倒産手続上の敷金の取扱い」★★★

〔第2問〕
・2018選択科目集中答練第2回(倒産法)第2問
 「申立棄却事由」★★★
 ●租税法
■公開:2018年05月23日/11:00
■更新:2018年06月22日/11:20
1 はじめに
     所得税法・法人税法の双方からの出題がなされている点は,近年の出題傾向・形式に合致しています。また,本年度の出題では,全体的に,租税法規適用の前提となる私法関係への着眼を求める設問が多いように感じられました。租税法の各論的知識というよりもむしろ,租税法的な「考え方」「捉え方」を問うているものと思われます。租税法の基本的理解が求められる点では例年と変わらず,難易度も例年通りと考えられます。
 
2 問題文
    法務省HPにて公開された論文式試験選択科目の問題文はこちら。
 
3 本問の分析

〔第1問〕
1 設問1について
   包括的所得概念によれば,100万円はAの所得を構成することになりそうです。しかし,所得税法は課税になじまないものを例外的に非課税としているため(同法9条1項),本件では,100万円の全部又は一部に同項17号の適用があるかどうかを検討することになります。
   100万円のうち実費及び慰謝料に相当する部分については,その法的性質は不法行為を原因とする損害賠償金と考えられます。そうすると,同法施行令30条の要件充足性を検討すべきところ,通院治療費相当額10万円,休業補償相当額10万円及び慰謝料15万円は非課税となります(同法施行令30条1号)。宅配用バイク修理費相当額10万円は,Aの事業用資産に対する損害の補填であるため,課税所得となります(同法施行令30条柱書第3かっこ書)。
   残部55万円については,その法的性質を示談書の名目通りに損害賠償金と評価できるのかが問題となります。支払経緯や金額の多寡,Xの認識内容などから,損害賠償金ではないと捉えれば,同法9条1項17号の適用はありません。これに対し,法的性質を損害賠償金と捉えた場合,同法施行令30条3号の「相当の見舞金」「対価」該当性が問題になるでしょう。
2 設問2について
   損害賠償請求債権は法的には存続しているので,「損失」(法人税法22条3項3号)に該当するかが問題になります。同法33条との整合性から,貸倒損失と認められるためには全額の回収不能が客観的に明らかであることを要するところ,興銀事件判決(最判平16.12.24)の判示内容を踏まえると,債権回収活動によりコスト倒れにしかならないと見込まれる本件においては,貸倒損失として損金算入が可能と考えられます。

〔第2問〕
1 設問1について
   源泉徴収の法律関係は,国・支払者間(と支払者・受給者間)に生じます。国・受給者間に直接の法律関係は生じないため,Eが源泉税額をAから徴収することはできません。
2 設問2について
   Aらの見解は,本件資金移動をAの不法行為と捉えるものと理解できます。この理解によると,X社はAに対して不法行為に基づく損害賠償請求権を取得するため,その価額である1000万円が益金算入されます。
   問題はその年度帰属です。不法行為債権の成立時期に関する民法の解釈論から,本件資金移動の時点で所得の「発生」は認められるとしても,当該時点において直ちに所得の「実現」までをも肯定できるとは限りません。法人税法22条4項を踏まえつつ年度帰属の判断基準を示した上,本件の事情を当てはめることになるでしょう。その際には,平成27事業年度中にX社が損害賠償請求権を行使することが現実に期待できたかに留意すべきでしょう
3 設問3について
   本件資金移動がAへの「賞与」(所得税法183条1項,28条1項)に該当するか,その法的性質が問題となります。いわゆる認定給与については,確立した基準が存在するわけではありませんが,例えば役員たる地位に基づく給付かどうかという視点からの検討が考えられます。その際には,会社法の規律に基づいて役員報酬が支給されたわけではないこと(私法上の法形式)を踏まえつつも,AがX社の業務全般を掌握していたこと(実質的支配)や,他の役員の認識・態度(黙認ないしは黙示的な追認の有無)などの評価がポイントになるでしょう。
   本件資金移動を,横領(不法行為)であり「賞与」ではないと捉えた場合には,X社に源泉徴収義務はありません。

 
4 的中情報★★★
〔第1問〕
・2018司法試験全国公開模試(租税法)第2問
 「貸倒損失」★★★
・2018スタンダード論文答練(租税法2)第2問
 「非課税となる損害賠償金等の範囲」★★★
・2018選択科目集中答練第8回(租税法)第1問
 「損害賠償金の非課税の範囲」★★★
  
〔第2問〕
・2018司法試験全国公開模試(租税法)第2問
 「損害賠償請求権の両建て」★★★
・2018スタンダード論文答練(租税法2)第2問
 「源泉徴収制度」★★★
・2018選択科目集中答練第4回(租税法)第1問
 「源泉徴収義務の可否,過大な源泉徴収への対応方法」★★
 ●経済法
■公開:2018年05月22日/17:00
■更新:2018年06月22日/11:20
1 はじめに
     本年は,不当な取引制限及び課徴金の計算分野から1問,拘束条件付取引分野から1問の出題となりました。いずれの問題においても,独占禁止法の基本的な概念や判例及び審決例についての知識に基づき,事実関係を丁寧に当てはめることが求められています。
 
2 問題文
    法務省HPにて公開された論文式試験選択科目の問題文はこちら。
 
3 本問の分析

〔第1問〕
   本問は,不当な取引制限の成否及び成立した場合の課徴金の計算などの条文適用を問う問題です。スタンダードな問題であり,基本的な判例知識・条文知識を事案に丁寧に当てはめれば良い答案が書けるでしょう。
1 設問(1)について
   本設問は,不当な取引制限の成立に必要な意思の連絡について問う問題です。A社からF社のうち,会合から退席したC社及び価格に関する合意に参加しないことを明言しつつ会議の場にいたA社に対する違反の成否を検討する必要があります。特にA社については,東芝ケミカル事件(東京高判平成7年9月25日)において示された黙示の合意の成否(競合他社間での製品価格情報の交換と事後の値上げ行動の一致による合意の推認)を具体的な事実に即して検討する必要があります。また,D社については,値上げをすることが難しいと会議で発言し,最終的に値上げをしなかったY製品についての合意の成否を検討する必要があります。さらに,Y製品については,D社が最終的に値上げができなかったことをどう評価するか,競争の実質的制限の解釈との関係で検討をすることになるでしょう。
2 設問2について
   本設問は,課徴金の計算方法及びそれを減額するための措置について,制度の基本的な理解・条文知識を問う問題です。課徴金の算定の根拠となる売上高を確定し,それに適切な課徴金算定率を掛けることによって課徴金額を算定することになります(独禁法7条の2)。また,責任を軽減するための手段として課徴金減免制度(同法7条の2第10項以下)の利用を検討することになります。本問では公取委による立入検査を受けた後ですので,調査開始後の申請である同条12項の適用があり,課徴金の30%の減額となります。そして,調査開始後の減免を受けるためには,「既に公正取引委員会によつて把握されている事実」(同項1号)以上のものを報告する必要がありますので,弁護士乙としては,本件でどのような事実・資料を報告する必要があるかを分析することになるでしょう。

〔第2問〕
   本問は,日本でもなじみの深いサービスであるオンライン旅行予約サイト(OTA)による取引慣行が,不公正な取引方法の一つである拘束条件付取引に該当するか否かを問う問題です。問題で触れられた取引慣行はいわゆる最恵待遇条項と呼ばれ,昨年6月に公正取引委員会が公表したアマゾンジャパン合同会社に対する件(http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h29/jun/170601.html)において問題になっており,最近の動きについてフォローすることの重要性を再認識させられる問題です。なお,海外では,本事案と同様の取引慣行が問題となった実際の案件が存在します(詳細については,和久井理子「最恵待遇条項(MFN)・価格均等条項と独占禁止法-プラットフォーム事業者による拘束を中心に」(上)(下)NBL 1093号 19頁,同1095号 39頁などをご参照ください。)。
   上記のような国内外の最近の動きをフォローしていなかったとしても,通常の問題と同様,拘束条件付取引の各要件について,問題文にある事実をしっかりと拾って,当てはめをしていくことができれば,十分な解答をすることが可能です。特に本問では,「公正競争阻害性」すなわち自由競争の減殺効果がどのように発生するかについて厚く論ずることが求められるでしょう。問題文の参考資料として取引慣行ガイドラインにおける考慮要素が記載されていますので,各要素に沿った事実を丁寧に拾って当てはめていくことになります。その際,第1案と第2案における違いをしっかりと意識することが重要です。第1案と第2案の違いは最恵待遇条項の適用範囲が,新規参入事業者を含む他のOTAのサイト上で提示している宿泊料等にも及ぶか否かにあります。当該最恵待遇条項が及ぶことになると,他のOTAは,常に有力なOTAであるA社に自社と均一か,自社よりも有利な宿泊料等の提示を消費者にされてしまうことになります。その結果,他のOTAは,自社の手数料を下げて消費者に対し有利な条件を示して売上を拡大することができなくなり,OTA各社間の手数料に関する競争が阻害されることになります。
   さらに,問題文イに記載されている,いわゆるただ乗り(フリーライド)問題をどのように評価するかも重要なポイントです。OTAは多額のシステム投資をした上でサービス提供し,サイトを経由した成約の際に手数料をとるというビジネススキームですが,価格比較のサービスだけを無料で使われた上で他のサイトからより安価な価格で予約することが可能となってしまうと,OTAによるシステム投資のインセンティブを損ね,OTAによるサービス競争が阻害されてしまいます。最恵待遇条項はこのようなただ乗りを防止し,OTA各社間の競争を促進し得るものである点を検討することが重要となります。

 
4 的中情報★★★
〔第1問〕
・2018スタンダード論文答練(経済法2)第1問
 「『共同して』の認定」★★★

〔第2問〕
・2018スタンダード論文答練(経済法1)第1問
 「『拘束』の意義と判断基準」★★
 「拘束条件付取引の公正競争阻害性」★★
・2018選択科目集中答練第3回(経済法)第2問
 「『拘束』(一般指定12項)の意義」★★
 「一般指定12項にいう『不当に』の意義」★★
・2018選択科目集中答練第7回(経済法)第2問
 「拘束条件付取引」★★
 ●知的財産法
■公開:2018年05月25日/09:50
■更新:2018年06月26日/11:00
1 はじめに
     第1問(特許法)は,審決取消訴訟と権利行使制限の抗弁について問うものでした。設問1ないし3は,甲乙それぞれの主張の論拠を述べさせた上で,妥当性について検討させるものですが,以下では甲乙の主張の根拠となり得るものを述べました。設問4も含め,論理的に展開できていれば,結論はいずれでもよいものと思われます。第2問(著作権法)も,当事者の主張を述べさせた後に,妥当性について検討させるものですが,以下では考え得る主張のみを述べました。両問とも作業量が多く,実際の答案作成にあたっては時間配分が重要となったと思われます。
 
2 問題文
    法務省HPにて公開された論文式試験選択科目の問題文はこちら。
 
3 本問の分析

〔第1問〕
1 設問1について
   審決取消訴訟の審理範囲について問う問題です。甲は,審判手続において現実に争われ,審理判断された特定の無効原因に関するもののみが審理の対象となるという最大判昭51.3.10(百選48事件)と同旨の理由で乙の主張は許されないと主張します。これに対し乙は,訴訟物は審決の違法であり,審判請求書に無効事由として掲げた以上審理対象になっているのだから,許されると主張します。
2 設問2について
   審決取消訴訟の拘束力の及ぶ範囲について問う問題です。甲は,再度の審決取消訴訟において,前の取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断を争うための新たな立証をすることは許されないという最判平4.4.28(百選54事件)と同旨の主張をします。これに対し乙は,再度の審決の認定判断において審究・説示されていない事項で,その認定判断を否定する方向の事実を裏付ける証拠の提出は許されるという,上記最判の原審と同旨の主張をします。
3 設問3について
   進歩性があるとする審決が確定した後に,審判請求人であった侵害訴訟の被告が,進歩性がないことを理由とする権利行使制限の抗弁(104条の3)を提出できるかを問う問題です。甲は,乙が請求した同じ証拠にもとづく同じ無効理由を主張した無効審判が不成立で確定したのだから,167条により一事不再理効が生じる結果,「無効にされるべきもの」に当たる余地はなく,許されないと主張します。これに対し乙は,侵害訴訟における権利行使制限の抗弁には対世効はなく,無効審判とは性質が異なること,167条によっても別の者が同じ証拠にもとづく同じ無効理由を主張して無効審判を請求することは許されるのであるから,「無効にされるべきもの」に当たる可能性もあるとして,許されると主張します。
4 設問4について
   共同出願違反については,特許を受ける権利を有するものでなければ無効審判を請求できないところ(123条2項),丙が権利行使制限の抗弁(104条の3)においてこれを主張できるかが問題となります。
  
〔第2問〕
1 設問1について
   Xは,ガイドマップAには本件観光スポット50か所の選択に創作性が認められるため,ガイドマップAは編集著作物(12条)であり,XとYが共同して作成した共同著作物(2条1項12号)であるため著作権を享有すると主張します。そして,(1)ガイドマップAが地図の著作物(10条1項6号)であるとすれば,表記方法に具体的変更を加えたものとして地図Mの作成は翻案権(27条)を,販売は複製権(28条・21条)及び譲渡権(28条・26条の2第1項)の侵害に当たると主張します。また,(2)地図Mが「全く同じ」であることに着目し,ガイドマップAとイラストを結合著作物であるとすれば地図Mの作成は複製権(21条)を,販売は譲渡権の侵害に当たると主張します。これに対しZは,Xは編集に関してコンセプトというアイディアを考えたにすぎず,編集著作物の共同著作者としての創作的寄与が認められず,共同著作者にならないとの反論をします。
2 設問2(1)について
   Xは,ガイドマップAの配信行為は,望まない氏名表示がされたため氏名表示権(19条1項)を侵害し,また,公衆送信権(23条1項)の侵害に当たると主張します。これに対しYは,氏名表示権については,Xは「著作者名を表示しないこと」を表明していたとはいえない等の反論をするとともに,ガイドマップAはXYの共同著作物であるからXは信義に反して著作者人格権行使について合意の成立を妨げることはできず(64条2項),正当な理由がなければ著作権行使について合意の成立を妨げることはできない(65条3項)から,差止めは権利濫用に当たると反論します。
3 設問2(2)について
   Sは,本件出題については,氏名表示権について19条3項に当たる,同一性保持権(20条1項)について20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に当たる,複製権についてS社内部という限られた範囲の私的複製(30条)に当たる,試験問題のための複製(36条1項)に当たる,損害(民法709条)は生じていないと反論します。本件問題集については,上記のほか,ガイドマップAの引用(32条1項)に当たると反論します。

 
4 的中情報★★★

〔第1問〕
・2018選択科目集中答練第4回(知的財産法)第1問
 「審決取消訴訟の審判範囲」★★★
・2018選択科目集中答練第7回(知的財産法)第1問
 「審決取消訴訟における無効理由の追加の可否」★★
  

〔第2問〕
・2018司法試験全国公開模試(知的財産法)第2問
 「共有著作権の『行使』と『正当な理由』」★★★
・2018スタンダード論文答練(知的財産法1)第2問
 「著作者の認定」★★
・2018スタンダード論文答練(知的財産法2)第2問
 「引用」★★
・2018選択科目集中答練第1回(知的財産法)第2問
 「著作権法2条1項12号の『共同著作物』」★★
 「著作権法36条1項の『試験又は検定の問題』」★★
・2018選択科目集中答練第8回(知的財産法)第2問
 「編集著作物の『素材』」★★

 ●労働法

■公開:2018年05月28日/11:15
■更新:2018年06月21日/13:30

1 はじめに
     論文本試験の労働法の設問については,第1問が個別的労働関係に関する出題であることは一貫していますが,第2問については,集団的労働関係に関する出題が出題されるか,もしくは個別的労働関係に関する論点と集団的労働関係に関する論点との融合問題が出題される傾向にあります。本年度は,第1問が個別的労働関係に関する出題,第2問が集団的労働関係に関する出題と,オーソドックスな出題形式になりました。
   設問を全体としてみた場合,本年度については以下の点が特徴的であると感じます。第一に,昨年度までに比べると,出題内容が全体として易化していると感じます。昨年度までは,ややマイナーな論点や学界において議論が激しい最新の論点を参照した設問が当然のように出題されたり,オーソドックスな論点であっても,事実関係に一ひねりがあって答案構成に工夫が必要な出題が珍しくありませんでした。この点,本年度については,検討対象となる論点も,第2問の設問2を除いてはメジャーな論点ばかりですし,事実関係についてもそれほど込み入っておらず,答案構成に迷うような受験生は全体として少なかったのではないかと思います。
   第二に,事例における事実関係がシンプルになった代わりに,問われる論点の数が少し多かったと感じます。第1問については労働時間性と懲戒処分ということでこれは例年とそれほど変わらないと思いますが,第2問については不当労働行為の成否,統制処分の正当性,労働協約による不利益変更の効力と,全く異なる3つの論点について問われており,試験当日は,これらの幅広い論点について,いかに時間内にまとめて書くかという点が問われる結果になったのではないかと思います。昨年度までは,どちらかといえば事実関係の検証や各論点における判例・学説の整理に注力することが求められる出題が少なくなかったのに対し,本年度は,幅広い論点について基本的なポイントが押さえられているかどうか,ポイントを時間内にシンプルに答案に反映できるかどうかが問われたのではないでしょうか。こうした傾向が来年度以降も続くのか,注目しておく必要があると思います。
   第三に,設問全体として,論理構成次第では労働者側,使用者側,どちらの立場からも優位にとる立論が十分に可能な設問になっていることが注目されます。この点は,近年の労働法の出題全般に看取される傾向がそのまま続いており,おそらくは規範定立から当てはめまでのパターン化した答案を嫌っての出題傾向ではないかと推察されます。こうした設問の場合,当てはめにおいて,単に事実を羅列してダイレクトに結論を示す答案ではなく,事例中のどの事実を重視(軽視)するのか,なぜそれを重視(軽視)するのかを論理的・説得的に示すことが,高得点を得るためのポイントとなってきます。本年度については,問われている論点や事実関係がそこまで複雑ではなかったため,結果として,こうした答案の構成力によって得点差が生じることになるかもしれません。
 
2 問題文
    法務省HPにて公開された論文式試験選択科目の問題文はこちら。
 
3 本問の分析
  〔第1問〕
   
1 設問1について
  設問1は,労働基準法上の労働時間の定義,特に仮眠時間などのいわゆる「不活動時間」について,労働時間にあたるかどうかが問われています。労働時間の概念については三菱重工長崎造船所事件の最高裁判決が参考になりますし,不活動時間の労働時間制についてどのように考えるのかという点についても,大星ビル管理事件等の最高裁判決が示されています。解答にあたっては,これらの最高裁判決を踏まえて検討することが必要となりますが,いずれも極めて著名な判例であり,解答の入り口段階で対処に困った受験生はほとんどいなかったのではないでしょうか。
  解答にあたっては,仮眠時間が休憩時間にあたるか,具体的には「労働からの解放が確保されていた」といえるかどうかがポイントとなりますが,仮眠時間について場所的な拘束を受け,飲酒・喫煙が禁止されていること,他方で,二人体制であることや事例後半の記述から緊急時の対応が生じる可能性が低かったと評価しうること等を全体としてどのように評価するかがポイントになるでしょう。労働時間性をうかがわせる事情と休憩時間であることをうかがわせる事情が併存していることから,単に事実を羅列して結論を示すのではなく,どの事実を重く評価するか,またその理由は何かを示しつつ,全体としての結論に至る過程を論理的に示すことができているかどうかが,高得点を得られるかどうかの分岐点になると思われます。
2 設問2について
  設問2では,直接的には懲戒処分の有効性が問われています。したがって,懲戒権の根拠,及び労働契約法15条についての検討を行うことが基本となるでしょう。なお,公益通報者保護法については触れる必要がないとされていますが,他には検討から除外されているものがありませんので,労働基準監督署への申告を理由とする不利益取り扱いを禁止した労働基準法104条2項にも言及することが望ましいと思われます。もっとも,同条に言う「申告」の定義などを詳細に検討することが出題の趣旨とも思われませんので,同条に言及したうえで,同条違反の問題として扱うか,あるいは同条の趣旨を懲戒処分の有効性判断の中で反映させるという形で差し支えないものと思われます。
  具体的な検討にあたっては,まず懲戒権の根拠について,最低限フジ興産事件等の判例の考え方に言及したうえで,事例中では就業規則の周知の有無について記述が見当たらないことから,この点の場合分けが必要となるでしょう。仮に周知がなされているとすれば,懲戒にかかる規定自体には不合理な点は見当たりませんので,懲戒事由の該当性と,処分の相当性を,労働契約法15条なども踏まえて検討すればよいでしょう。具体的には,D課長が「労基署への匿名相談を含めて」と述べている点から,労基署への相談への報復という要素が含まれていることをどう評価するか(動機の競合の問題),Xの非違行為の内容や非違性の程度,Xの態度,過去の行為,処分に至るプロセス等を全体として検討することになるでしょう。一見して懲戒処分の有効性を認めるべき事情と,有効性を否定すべき事情とが併存していることから,単に事実を羅列して結論を示すのではなく,どの事実を重く評価するか,またその理由は何かを示しつつ,全体としての結論に至る過程を論理的に示すことができているかどうかが,高得点を得られるかどうかの分岐点になると思われます。
  なお,設問1で仮眠時間の労働時間性を否定する結論を採っている場合,「労働からの解放が保障されている」はずの休憩時間における対応に対して懲戒処分の対象となしうるのかという論点が新たに加わることになりますので,設問1で労働時間性を否定していた場合には,この点についても注意する必要があるでしょう。
  〔第2問〕
    1 設問1について
  設問1は,Cらに対する懲戒処分が不当労働行為にあたるかどうかが問題とされています。大前提として,第1問と異なり,懲戒処分の「有効性」ではなく,「不当労働行為該当性」が問題とされていますから,労働契約法15条についてではなく,あくまでも労働組合法7条(1号,3号)について検討することが必要となります(労働契約法15条について検討することは,かえって設問を理解していないとみなされ,減点の対象となる恐れが高いでしょう)。
  検討にあたっては,懲戒処分の対象とされたCらの行為が「正当な組合活動」といえるかどうかがポイントとなるでしょう。具体的には,「組合有志」との記載からも示される通り,組合の総意による行動ではないこと,勤務時間の開始前の行為であること,ビラ配布やウェブサイトへの掲載といった行為態様及びビラの内容等の相当性などを検討する必要があると思われます。
2 設問2について
  設問2は,統制処分の正当性を問うものです。この論点は,集団的労働関係法の中でもややマイナーな論点であることから,とまどった受験生もいるかもしれません。ただ,検討すべき事項としては,組合員の言論の自由や個々の組合員の独自の活動の権利を尊重すべきという観点から,組合全体の方針に反するからといって直ちに統制処分が有効とされるわけではないこと,したがって,Cらの活動の正当性,Z組合の活動に与える具体的な影響,処分内容,手続等を加味して,統制権の濫用にあたるか否かを検討すればよいでしょう。
3 設問3について
  設問3は,労働協約による労働条件の不利益変更の可否が問題となります。この点については,集団的労働関係法の中でも最重要論点の1つであり,ほとんどの受験生が一通りポイントを押さえていると思いますから,解答の入り口で困ることは少なかったと思います。解答にあたっては,朝日火災海上保険(石堂)事件で最高裁が示した枠組みを摘示したうえで検討を行っていけばよいでしょう。なお,「労働組合の目的を逸脱」するものといえるか否かの具体的な判断にあたり,どのような要素を重視するか(内容の合理性を重視するか,手続の合理性を重視するか,不利益を受ける者にかかる手続面での配慮を重視するか)について,学説上は争いがあります。これらの違いを踏まえて自身の立場を明確にしたうえで論証することがより望ましいものと思われますが,本問の場合,上記の立場の差が検討すべき事情や結論に劇的な影響を与えるものでもなさそうですので,この点が多少曖昧であっても解答としては大きく差し支えることはなかったものと思われます。
 
4 的中情報★★★

〔第1問〕
・2018選択科目集中答練第4回(労働法)第1問
 「労働基準法上の労働時間」★★★
  

〔第2問〕
・2018選択科目集中答練第4回(労働法)第2問
 「労働協約による労働条件の不利益変更」★★★

 ●環境法

■公開:2018年05月28日/10:20
■更新:2018年06月21日/13:30

1 はじめに
     今年の問題は,第1問が,共同不法行為責任及び公害紛争処理制度に関する問題(50点),第2問が,大気汚染防止法の2013年改正,私法上の差止訴訟及び行政訴訟,環境法の一般原則に関する問題(50点)でした。その出題形式は,例年通りであったといえます。
   第1問設問2で問われている公害紛争処理制度は,受験生が手薄な分野から出題だったといえます。しかし,同制度は,どの基本書にも載っているものですので,日頃から基本書で勉強していた受験生であれば,解けない問題ではなかったと考えられます。
 
2 問題文
    法務省HPにて公開された論文式試験選択科目の問題文はこちら。
 
3 本問の分析
  〔第1問〕
   
1 設問1について
  設問1小問(1)では,Dは,自己の財産権侵害を理由として,B社及びC社に対し,共同不法行為責任(民法719条1項後段ないし類推適用)に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。設問1小問(2)では,Eは,自己の健康被害を理由として,B社及びC社に対し,共同不法行為責任(民法719条1項後段ないし類推適用)に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。
  両者の請求とも,被侵害利益の特定,関連共同性の認定,因果関係の有無の評価,損害の認定等を正確に行う必要があります。特に,関連共同性の認定との関係では,工業地帯での大気汚染や水質汚濁の場合と異なる,集中豪雨に伴う二次災害を防ぐ目的でB社が放流した行為をどう評価するかが問題となります。また,因果関係の有無の評価との関係では,C社の金属加工工場の堤防の割れ目から排出されたセレン化合物が,B社の放流による濁水により,沿岸海域まで流出したとしても,同海域付近のDの第1いけす及び第2いけすまで流出したといえるか,その第2いけすで養殖されたはまちは上記セレン化合物によって汚染されたといえるかが問題となります。
2 設問2について
  まず,【資料】で公害紛争処理法(以下「法」という。)が掲載されています。同法は,司法試験用六法には掲載されていないため,【資料】の条文のみ必要な範囲で引用すればいいとわかります。次に,Eは,「自ら因果関係を立証するのは負担が大きく困難だと思っている。」ことから,因果関係の存否についての行政の判断をする原因裁定(法42条の27)を論じる必要があります。
  そして,同裁定を利用する理由としては,①職権による証拠調べ及び事実の調査が行われること(法42条の33,法42条の16,法42条の18)や,②Eが,因果関係判断のための鑑定費用等の費用負担を負わないこと(法44条1項,法施行令17条1項1号),③同裁定には,裁判所や当事者に対する法的拘束力はないが,民事訴訟と比較して,早期に判断が出ることを論じる必要があります。
  なお,裁定には,この他,責任裁定(法42条の12)があります。この裁定については,損害賠償責任の有無に関する裁定であることと,同裁定の主要な意義である法律上の擬制的合意(法42条の20第1項)が【資料】に掲載されていないことから,本問では解答が求められていないと考えます。
  〔第2問〕
    1 設問1について
  まず,本件工事が,青石綿という特定建築材料(大気汚染防止法施行令(以下「施行令」という。)3条の3)を含有した建物の改造工事(施行令3条の4第2号)であることから,「特定粉じん排出等作業」(大気汚染防止法(以下「法」という。)2条12項)を伴う建設工事といえ,「特定工事」に当たることを指摘する必要があります(法18条の15第1項)。その上で,本件工事の「発注者」であるBは,A県知事に対し,本件工事の開始日の14日前までに,本件工事の特定粉じん排出等作業の実施の届出をするという措置を講じる必要があったことを論じます(法18条の15第1項)。
  次に,研究棟は昭和40年代後半に建設された建物であるから,特定工事に該当しないことが明らかな建設工事(大気汚染防止法施行規則16条の5)に該当しないことも指摘する必要があります。その上で,本件工事の「受注者」であるDは,上記Bの届出に先立ち,本件工事が特定工事に該当するか否かの調査をし,本件工事の開始日の前又は特定粉じん排出等作業の14日前までに,その調査結果及び届出事項を発注者であるBに説明するとともに,その結果等を本件工事現場に掲示するという措置を講じる必要があったことを論じます(法18条の17第1項)。
2 設問2について
  まず,A県知事は,Bに対し,法18条の17に基づく調査について,報告を求めることができます(法26条1項,施行令12条7項)。
  次に,A県知事は,Dに対し,本件工事における「特定粉じん排出等作業の状況」について,報告を求めることができます(法26条1項)。また,職員に検査させることもできます(法26条1項)。そして,Dに対する上記報告ないし検査により,本件工事における作業基準が遵守されていなければ,A県知事は,Dに対し,作業基準適合命令や本件工事の一時停止命令を出すことができます(法18条の19)。
3 設問3について
  まず,C保育園の園児らは,Dに対し,人の健康への侵害を被侵害利益として,私法上の本件工事の差止訴訟を提起することが考えられます。
  次に,設問1で述べた法18条の17に基づく調査等をしていないDの本件工事は,遵守すべき作業基準を遵守していないおそれがあることから,C保育園の園児らは,A県知事に対し,法18条の19に基づく作業基準適合命令ないし本件工事の一時停止命令を義務付ける非申請型(直接型)義務付け訴訟(行政事件訴訟法3条6項1号)を提起することが考えられます。
4 設問4について
  まず,廃棄物の処理及び清掃に関する法律19条の5第2号は,汚染者支払原則(原因者負担原則)に基づいたものであることを指摘します。その上で,この汚染者支払原則(原因者負担原則)を取り入れた趣旨は,従来の十分な調査をせずに解体等工事を行い,有害物質である石綿を飛散させていたことから,実質的な排出者(原因者)である発注者に責任を負わせることで,かかる工事を防止することにあると指摘します。
 
4 的中情報★★★

〔第1問〕
・2018スタンダード論文答練(環境法2)第2問
 「裁判外紛争処理制度の特色」★★
・2018選択科目集中答練第1回(環境法)第2問
 「共同不法行為」★★
・2018選択科目集中答練第2回(環境法)第2問
 「裁判外紛争処理制度の特色」★★
  

〔第2問〕
・2018司法試験全国公開模試(環境法)第2問
 「特定粉じん(石綿)規制(作業規制)」★★★
・2018選択科目集中答練第2回(環境法)第1問
 「民事差止訴訟の根拠論」★★
・2018選択科目集中答練第8回(環境法)第2問
 「大気汚染防止法2013年改正(特定工事関連規定)の趣旨」★★★

 ●国際関係法(公法系)

■公開:2018年05月23日/13:00
■更新:2018年06月22日/11:20

1 はじめに
     今年度の事例は,第1問がガブチコボ・ナジュマロシュ事件およびテヘラン事件と,第2問がプレア・ビヘア寺院事件と酷似しており(部分的には異なります),これらの判例を熟知しているかが高得点の鍵となったと考えられます。また,問題文後半は,第1問は慰安婦像(および徴用工像)設置問題を,第2問は竹島問題を連想させるものであり,隣国との関係ないし現代的問題も出題の背景にあるように思われます。解答に窮する問題はなく,難易度はさほど高くないといえます。
 
2 問題文
    法務省HPにて公開された論文式試験選択科目の問題文はこちら。
 
3 本問の分析
  〔第1問〕
    1 設問1について
  ガブチコボ事件判決に基づけば,対抗措置該当性の検討が中心的課題になると考えられます。対抗措置の要件は,国家責任条文の49~54条に詳記されていますが,とりわけ①先行違法行為の存在,②事前の救済請求,③均衡性(および④義務遵守目的)の3ないし4要件に照らすとよいでしょう。①の要件は満たされる一方で,②~④は設問から十分に明らかではありません。とりわけ③に焦点を当て,Xダム建設中止という被害と,農業用水となるC川の水量激減をもたらすYダム建設という対抗措置とでは,均衡性を欠くため対抗措置とは認められないという判例同様の解答が,無難であるように思われます。
  なお,対抗措置以外に,B国による条約の重大な違反や,緊急避難の可能性について言及してもよいと思います。
2 設問2について
  条約の終了は,同意によるのが原則ですが,B国は一方的に終了を通告しています。ガブチコボ事件では,条約の一方的終了の正当化根拠として,①緊急事態,②後発的履行不能,③事情の根本的変化,④条約の重大な違反が検討されています。①はそもそも条約の終了原因としては認められず,②~④は条約法条約60~62条に規定されているので,条文に照らした解答が求められます。①~③に基づく正当化が困難な一方で,C川の水量に関する合意があるなかでその激減を伴うA国によるYダム建設は,条約の趣旨目的の実現に不可欠な規定についての違反であるといえるように思われます(条約法条約60条3項b号)。そうであれば,④の条約の重大な違反を根拠に,B国はT条約の終了を正当化しうるといえます。
    3 設問3について
      ①警備体制の強化の不実施,②大使館占拠・人質への不対応,③農民の行動の支持という一連の対応について評価することが求められます。①に関連して,日本は釜山の総領事館前の徴用工像設置とデモについて,領事関係条約違反の可能性を指摘している一方で,韓国は国際礼譲と慣行を考慮する必要があると述べています。こうした点を念頭に置きつつも,解答としては,大使館の不可侵に関する外交関係条約22条,および外交官の身体の不可侵に関する同29条に規定される適当な措置をとっていないとの結論が書きやすいと思われます。
  ②については,私人の行為であるため国家責任の帰属の要件を満たさない一方で,外交関係条約22,29条に基づく相当の注意義務違反があるといえます。また,③については,追認により私人の行為が国家に帰属することになるため(国家責任条文11条),B国による直接の②の条約違反が認められます。
  〔第2問〕
    1 設問1について
  プレア・ビヘア寺院事件と異なり,両国とも国境線が誤っていることに気づいていなかったため,同事件と同じ論理(黙認ないし禁反言)を用いることはできず,やや難しい問題です。権原を主張する必要があり,先占と時効が考えられます。先占の3要件(①無主地,②領有意思,③実効的占有)のうち,無主地であったかの事実的判断が難しく,B国の領土であったということになれば,時効を主張することになります。時効はそもそも権原として疑義があるため,無主地であったかの事実的判断に応じて,先占が認められる余地があるように思われます。
2 設問2について
  選択条項受諾宣言への留保について問う問題です。裁判所の管轄権が排除される範囲を主観的かつ自動的に拡大する「自動的留保」については,有効無効の議論があります。これについては,相互主義に基づき,相手国の留保を援用することはできるという観点に立ち,国境紛争と解釈される紛争に関する管轄権を除外するA国の留保を,B国が援用することはできると解答できるように思われます。他方で,自動的留保は無効であり援用できないという主張も,説得的な根拠を伴えば可能と考えられます。
3 設問3について
  判決上の義務の不履行については,安全保障理事会に勧告や決定を求める訴えを提起することができます(国連憲章94条)。対抗措置や自衛権行使の可能性も考えられますが,竹島問題を念頭に置くと,とりわけ自衛権の行使については消極的に考えた方がよいように思われます。
 
4 的中情報★★★

〔第1問〕
・2018スタンダード論文答練(国際関係法〔公法系〕2)第2問
 「事情の根本的変化による条約の終了」★★★
・2018選択科目集中答練第2回(国際関係法〔公法系〕)第2問
 「対抗措置」★★★
 「条約の終了原因」★★★
・2018選択科目集中答練第1回(国際関係法〔公法系〕)第1問
 「国家への帰属」★★
  

〔第2問〕
・2018スタンダード論文答練(国際関係法〔公法系〕2)第2問
 「選択条項の留保の相互性・期限」★★★

 ●国際関係法(私法系)

■公開:2018年05月22日/17:00
■更新:2018年06月21日/13:30

1 はじめに
     今年度の問題も,第1問が国際家族法に関する問題(50点),第2問が国際財産法に関する問題(50点)であり,その出題形式は,例年通りであったといえます。国際私法・国際民事手続法・国際取引法という区分によれば,今年度は,国際取引法の分野からの出題がなかったといえるでしょう。
  第1問の設問2は,教科書には説明が少ない時際法についての問いであり,その解答に戸惑った受験生もいたのではと感じました。しかし,百選そしてどの教科書にも書かれている最高最判決をベースにしたと思われる出題もあり,それ以外の問題は,きちんと準備をして試験にのぞんだ受験生にとっては,取り組みやすい問題であったと思いました。
 
2 問題文
    法務省HPにて公開された論文式試験選択科目の問題文はこちら。
 
3 本問の分析

〔第1問〕
1 設問1について
  設問1は,最判平成12年1月27日をベースにした出題と思われます。
  本問では,まずは,先決問題の解決方法(法廷地国際私法説,本問題準拠法所属国国際私法説など)について言及しておく必要があると思います。
  そして,法廷地国際私法説によるのであれば,出生以外の事由により嫡出性を取得する場合の嫡出親子関係の成立の準拠法は,法の適用に関する通則法28条によって判断するのか,30条によって判断するのか,33条によって判断するのか(または,条理によって判断するのか)を論じる必要があります。
  28条,30条,33条(または,条理)のいずれかに法性決定した上で,それぞれの規定にあわせて,42条の公序条項について論じる必要があります。
2 設問2について
  法の適用に関する通則法は,法域を指定する規定であり,指定された法域の法のうち,新法が適用されるのか,それとも,旧法が適用されるのかという時間的適用関係については,もっぱら,その法域の経過規定(時際法)によって解決されることを説明すればよいでしょう。
3 設問3について
  設問3は,最判平成6年3月8日をベースにした出題と思われます。①共同相続人がどのような形態で不動産を承継しているのか,②遺産分割前に不動産の持分を処分できるか,③遺産分割前に不動産の持分を処分できないにもかかわらず,第三者に売却した場合に,持分は第三者に移転するのかという問題の準拠法が,法の適用に関する通則法36条によって判断されるのか,それとも,13条2項によって判断されるのかを論じればよいでしょう。

〔第2問〕
 1 設問1について
 (1) 小問1

     まずは,消費者の住所が日本にあることから(訴え提起の時も契約締結の時も),民事訴訟法3条の4第1項によって,日本の国際裁判管轄権が認められることを説明する必要があります。その際,特に,Yが事業者に該当することを丁寧に説明する必要があるでしょう。
  そして,同法3条の9の特別の事情の有無について論じる必要があります。

   (2) 小問2

     まず,法の適用に関する通則法11条6項1号と2号に該当することを丁寧に説明して,同法11条が定める消費者契約の特例に関する規定が適用されないことを説明する必要があります。
   そして,当事者による準拠法の選択が明示のものも,黙示のものもないことを説明して,同法8条1項と2項に当てはめて,甲国法が準拠法になることを説明すればよいでしょう。

2 設問2について
   本件絵画の所有権がXに移転しているかどうかの準拠法が問題となることから,まずは,その準拠法は,法の適用に関する通則法13条2項によって判断されることを指摘しなければなりません。
   その上で,当初,本件絵画が所在した甲国法によれば,所有権がXに移転していないことを説明し,移動中の物が公海上にある場合の「原因となる事実が完成した当時におけるその目的物の所在地法」について学説を挙げながら論じ,その法によれば,本件絵画の所有権がXに移転しているかを説明すればよいでしょう。

 
4 的中情報★★★

〔第1問〕
・2018選択科目集中答練第1回(国際関係法〔私法系〕)第1問
 「相続と物権の準拠法の関係」★★★
・2018選択科目集中答練第7回(国際関係法〔私法系〕)第1問
 「公序条項」★★★
  

〔第2問〕
・2018スタンダード論文答練(国際関係法〔私法系〕1)第2問
 「特徴的給付の理論」★★★
・2018選択科目集中答練第4回(国際関係法〔私法系〕)第2問
 「当事者による準拠法の選択がない場合の契約の準拠法」★★★
・2018選択科目集中答練第6回(国際関係法〔私法系〕)第2問
 「特徴的給付の理論」★★★
 「黙示の準拠法選択」★★

 
 
 
 
 
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